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事業承継、ソコが聞きたい! 第28回 支援機関の活用

 

中小企業の事業承継には各種の専門機関が支援活動を行っています。
今回は事業承継を検討する場合や、事業承継の実施時に支援を行う各種機関について改めて解説します。

中小企業の支援機関

中小企業経営者の周囲には、身近なものから専門的なものまで多様な支援機関が存在します。
代表的な公的支援機関は以下の通りですが、今後は支援機関相互の連携強化や創業・事業再生事業との連携なども検討されており、中小企業に対するサポート体制の充実が期待されています。

独立行政法人中小企業基盤整備機構

独立行政法人中小企業基盤整備機構(以下、中小機構)は、中小企業の経営者の事業承継円滑化支援として以下の施策を行っています。

事業承継ポータルサイト

中小機構はホームページ上で事業承継のパターンやポイントなどをまとめたポータルサイトを開設しています。具体的には、事業承継のパターン(親族内承継、従業員承継、第三者承継の3パターン)、事業承継のポイント(ヒトの承継、財産の承継、知的財産などの承継)、事業承継の体験談を紹介し、事業承継を適切に行うための支援をしています。

セミナー・研修

中小機構は事業承継に関するセミナーや研修を定期的に開催しています。気軽に参加できるセミナーは、忙しい中小企業の経営者にとって、将来の事業承継に備えた情報を効率よく有効に得る場として活用することができます。

個別相談窓口

中小機構は全国11ケ所に事業承継相談窓口(無料)を設置し、事業承継に関して個別相談を行いたい中小企業の経営者に対して、弁護士や中小企業診断士などの専門家が事業承継に関するアドバイスや、情報提供を行っています。

事業引継ぎ支援センター

事業引継ぎ支援センターは、経済産業省が運営する第三者継承(M&A)に特化した公的相談窓口で、実際には経済産業省から委託を受けた各都道府県の商工会議所などによって運営されています。
事業引継ぎ支援センターがM&Aの相手先と直接交渉することはありませんが、民間機関では扱わないような小規模な案件でも気軽に相談できることが特徴で、具体的な支援業務内容は以下の通りです。

M&Aよろず相談

譲渡の可能性、自社評価額の概算、判断材料、交渉時の留意点、合意後の手続きなどM&Aに関して幅広い相談を受け付けてくれます。特に民間企業では取り組めないような小規模案件の相談やM&Aを実行する際のセカンドオピニオンとしても活用できる点が特長です。

従業員承継のアドバイス

中小企業にとって身近なM&Aである従業員承継について、会社を手放す経営者からの相談は勿論、引き継ぐ側の従業員からの相談も受け付けてくれます。従業員承継の相談は事業引継ぎ支援センターの登録専門家(弁護士、司法書士、会計士、税理士)と連携したサポートになりますので、各専門家に実務を依頼する場合は一定の費用がかかります。

承継先が決まっている際のアドバイス

経営者自身で相手先を見つけ、相手先の意思確認もできているケースに限って、譲渡までの一連の手続きや契約書の作成等を事業承引継ぎセンターが登録専門家と連携してサポートします。ただし、各専門家に実務を依頼する場合(契約書作成、株価計算、税務上のアドバイスなど)には一定の費用がかかります。

事業承継の候補先の紹介(「後継者人材バンク」)

事業承継引継ぎセンターに寄せられている譲受情報の中からマッチングを行うことで、承継候補先を紹介します。
全国47都道府県の支援センターと情報共有を図ることにより、遠隔地間のマッチングにも取り組んでいます。

 

【事例】コーヒー豆卸売業が「事業支援引継ぎセンター」を活用したケース

30年前に脱サラをして地元で妻と二人で喫茶店を始めたA社長(67歳)は、拘りコーヒーが評判となって顧客層が拡大し、今では従業員を20名雇って、コーヒー豆の卸売業が本業となり、株式会社にまでになったことを誇りに思っていた。
A社長には子供がおらず、従業員等にも後継者候補が見当たらなかったため、事業継続については常々不安を抱いていた。A社長は従業員や顧客、関係者に迷惑をかけたくないという気持ちが強く、また、最近、年齢とともに、体調面に不安を感じはじめていたことから、M&Aによる事業譲渡を検討してみようと思い、まずは商工会議所から紹介された事業支援引継ぎセンターに相談することとした。
M&Aについて全く知識のなかったA社長には事業支援引継ぎセンターによる幅広いアドバイスが大変参考になった。特に第三者の目から見ても事業内容が評価され、十分に譲渡の可能性があることに勇気づけられ、M&Aによる事業譲渡を行う決意をした。
しばらくして、A社長は知人からB氏(35歳)を紹介された。B氏は、一念発起して会社を辞め、商工会議所が主催する創業セミナーを受講し、地元でカフェバーを創業するため、開業の準備を進めていた。親子ほど年が離れていた二人であったが、コーヒーに対する熱い想いが共通して意気投合し、株式譲渡による事業引継ぎの方向で検討を進めることととした。
実際に事業譲渡を進めるに当たって、A社長は再び事業支援引継ぎセンターに相談して、まずはセカンドオピニオンを求めるとともに、譲渡までの一連の手続きや契約書の作成等を事業引継ぎ支援センターの登録専門家に依頼して進めることとした。
その後、双方が基本合意に達したことから、A社長は、従業員や顧客、関係者に迷惑をかけずに済んだことに安堵して引退した。 現在、同社は若い社長に代わり、拘りコーヒーの味は引き継ぎながら、喫茶店はカフェバーに模様替えして商品のアンテナショップとしても活用し、卸売業としてのコーヒー豆の取り扱いも増えてきている。

 

中小企業庁(ミラサポ)

中小企業庁が展開するミラサポでは、中小企業の経営者の事業承継円滑化支援として以下の施策を行っています。

施策情報の提供

事業承継に関する民法や資金繰りや税金等についての幅広い情報がわかりやすくまとめられ、WEB上で公開されています。

専門家による相談窓口

全国9ケ所の経済産業局が窓口となり、相続紛争や事業承継の資金繰り、納税猶予まで相談できるのが特徴です。また、派遣専門家の検索もWEB上で行うことができます。

サポートツールの提供

事業承継マニュアルや事業承継計画表等のサポートツールがWEB上で公開されています。

データ・事例の提供

中小企業白書から事業承継を取巻く状況、後継者選びの現状と課題、事業承継の準備等の情報をピックアップし、WEB上で公開しています。

その他の公的機関

事業承継に特化されたものではありませんが、中小企業の経営者にとって利用可能なその他の公的機関には「再生支援協議会」や「経営改善支援センター」「よろず支援拠点」などがあります。

再生支援協議会

中小企業の事業再生に向けた取り組みを支援する「国の公的機関」(経済産業省委託事業)として47都道府県に設置されており、経験豊富な事業再生支援の専門家(金融機関経験者、公認会計士、税理士、中小企業診断士等)が、中小企業の経営者からの相談(資金繰り、事業計画作成、企業診断等)を無料で受け付けています。

経営改善支援センター

再生支援協議会内に設置された経営改善支援センターの事業は、一定の要件の下、認定支援機関が経営改善計画の策定を支援し、中小企業・小規模事業者が認定支援機関に対し負担する経営改善計画策定支援に要する計画策定費用およびフォローアップ費用の総額について、経営改善支援センターが、3分の2(上限200万円)を負担するものです。

よろず支援拠点

よろず支援拠点は、国が全国に設置する経営相談所で、中小企業の経営者からの経営革新や経営改善など、あらゆる悩みの相談にワンストップサービスで対応し、解決策を提示するとともにフォローアップも実施してくれます。

 

<支援体制のイメージ>
出展:事業承継ガイドライン(平成28年12月 中小企業庁)

 

プロフィール

一般社団法人 多摩経営工房(多摩ラボ)

中小企業診断士、社会保険労務士、税理士、ITコーディネータ等の資格を持つプロのコンサルタント集団で構成されている。
さまざまな分野や業種での実務経験が豊富な専門家が、日本経済を支える中小企業の役に立ちたいという強い意思と情熱を持ち、また日本の中小企業が持つ優れた技術やサービスを広く海外に展開し、国際社会にも寄与すべく以下の活動を行っている。

  • 多摩地域の企業の経営課題解決のため、地元密着でサポート
  • 企業と行政・金融機関などを繋ぐパイプ役として、また専門的知識を活用した中小企業施策の活用支援など、幅広い活動を通して企業発展を支援

多摩経営工房(多摩ラボ)ホームページ
http://tama-labo.jp/

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プロフィールページ:落合和雄(落合和雄税理士事務所)

 

 

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