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事業承継、ソコが聞きたい! 第18回 役員・従業員への事業承継(4) 債務・保証・担保の承継

 

役員や従業員に事業承継を行う場合の大きな課題として、債務や保証、担保などの承継の問題があります。今回はこれらの問題点について解説します。

債務・保証・担保の承継

承継時の問題点について

中小企業の事業承継時の債務や保証などの状況として、以下が考えられます。

  1. 会社が現経営者から借り入れをしている。
  2. 現経営者が会社から借り入れをしている。
  3. 現経営者などの資産(土地、建物など)が会社の債務の担保となっている。
  4. 会社が債務者(金融機関からの借り入れなど)で、経営者が保証人となっている。

承継時にこれらの状況について何も対応をしなければ、事業承継後も現経営者が負担を負い続けることになります。

事業承継時には、現経営者に帰属している債権・債務、物件等の担保、連帯保証をどのように清算するかを考える必要があります。

会社と経営者間での貸し借りへの対応

後継者が処理に苦慮しないように、現経営者と会社との間でどのような貸借関係になっているかを正確に把握、整理しておくことが重要です。
具体的には、計画的な返済を進め、事業承継時には多額な貸し借りがないようにしておきます。

会社からの借入金については、現経営者への退職金などを活用して、精算することなども考えられます。
会社への貸付金の場合には、返済の目途が立たなければ、資本金に振り替えてもらうことなどを検討してもよいでしょう。

現経営者の担保の扱い

現経営者の担保資産を後継者の担保資産に切り替えられればよいのですが、後継者が十分な資産を持っていることはあまりなく、実行できる場合はなかなかありません。
一番よいのは、現経営者の担保を外してもらうことです。しかし、金融機関の承諾を得ることはむずかしい場合が多いです。

このような時は、当面の間は現経営者が担保提供を継続しながら、その間に借入金の返済と財務状況の改善を行い、担保がなくても問題がない状態に会社を変えていくことも検討しないといけないでしょう。

現経営者が保証人となっている場合の承継時の対応

個人の連帯保証は債権者(金融機関など)と現経営者との関係の上に成り立っています。
事業承継をした後に、債権者が後継者を現経営者とまったく同じに扱うことは考えにくいため、後継者へのスムーズな移行がむずかしい場合があります。

これに関して、以下のような対応が考えられます。

【連帯保証への対応】

  • 連帯保証への対応1:後継者が保証人となる
  • 連帯保証への対応2:承継後も現経営者が引き続き保証人であり続ける

前者の後継者が保証人となる場合は、後継者に潤沢な資金がある場合を除いて次のような問題が生じます。

【後継者が保証人になる場合の問題点】

  • 問題点1:後継者家族の反対(大きな負債を背負うことへの心配)
  • 問題点2:金融機関などの債権者の同意が得られない(円滑に認めない場合が多い)

後者の承継後も現経営者が引き続き保証人であり続ける場合は、以下のような問題が生じます。

【現経営者が保証人を続ける場合の問題点】

  • 問題点1:現経営者が引き続き保証人であることで経営から離脱できない
  • 問題点2:現経営者が他界した場合、現経営者一族へ影響がある。

本来であれば、保証人を後継者に移行することが望ましいです。しかし、後継者の資産状況等によってはむずかしい場合もあります。
現在の両者の資産状況や会社の状況を踏まえ、承継前もしくは承継時に既存保証契約の見直しを実施することが肝要です。

既存保証契約の見直しに関する対応

平成25年12月に「経営者保証に関するガイドライン」が金融庁より発行され、既存保証契約の見直しについて、円滑に実施するよう各金融機関に示されました。
これは借入金に対する個人保証について、経営成績や今後の成長などを含め、より寛容にするという趣旨の見直しです。ガイドライン発効前よりも既存保証契約を見直しやすい状況となっています。

このガイドラインに沿って個人保証を見直してもらうため、次のような対応を承継前に実践することが望ましいです。

既存保証契約の見直し(1) 法人と経営者で明確な区分や分離を行う

まずは次のように法人と経営者との関係の明確な区分・分離を行います。

【法人と経営者との区分や分離】

  • 事業用資産はすべて法人名義とする。
  • 経営者や家族の自社株保有を定款で制限し、株主総会で役員報酬を決定する。
  • 承継時には現経営者が保有する当社株式をすべて譲渡する。
  • 法人から役員への貸し付けをなくす。
  • 経理と家計を区別し管理する。

既存保証契約の見直し(2) 財務基盤の強化を行う

財務基盤の強化を行い、次のように健全な財務状況にしていきます。

【財務基盤の強化】

  • 借入金の返済に耐えうる収益力を持つ。
  • 現在の返済状況に問題がなく、担保の保全状況も良好な状態を保つ。
  • 社内管理の牽制機能を充実させる。

最後に挙げた社内管理の牽制機能では、透明性の高い経営(外部コンサルによる計画策定など)や、監査機能の充実(取締役会に顧問税理士が常に出席するなど)、組織的経営の実現(会社の決定事項を合議制にする)などを目指しながら財務基盤を強化します。

既存保証契約の見直し(3) 財務状況の情報開示などで経営の透明性を確保する

次のように財務状況の情報開示などを行って、経営の透明性を確保します。

  • 年に1回の決算報告(貸借対照表、損益計算書等の計算書類の開示)
  • 求めに応じた試算表や資金繰り表の迅速な開示

これらのすべての施策は、債権者(主に金融機関など)と良好な関係を保つことにつながり、承継時に円滑な対応が可能となります。

債権者としては、会社として収益性が認められるのであれば、保証への対応について、比較的寛容な対応を取ります。
このため、まずは本業の競争力を高めて、収益力を向上させましょう。

また、承継より前であっても経営者保証の見直しが可能です。
保証期限到来時や業績好調時など、適宜適切に債権者と良好な関係を築きながら交渉を進めるとよいでしょう。

【現経営者の連帯保証を承継前に免除された例】

製造業を営むA社の現経営者B氏は、75歳となり長年一緒に仕事をしてきたC氏に、事業を承継しようと考えた。
しかしながらB氏は、会社としての運転資金(5000万円)の連帯保証人となっており、この連帯保証についてどのようにしたら良いか悩んでいた。

Ⅾ銀行とは30年来の付き合いで、過去には経営が傾きかけた時もあったが、B氏との信頼関係のもと特段の問題もなく借り入れを継続していた。

運転資金の一括返済を行い、改めて借り入れを行う際に、思い切ってD銀行担当者に連帯保証の解除について話をしてみた。当面の運転資金として改めて3000万円の借り入れを行いたいが、その際に連帯保証は必要なのか否かの相談であった。

Ⅾ銀行の担当者は、会社の収益力が向上している状況や受注状況も把握しており、経営計画の提出を求めてきた。
2週間後、現在の経営状況と今までの信頼関係から、連帯保証を付けずに借り入れることが了承された。B氏は喜んで契約した。

B氏には事業承継の考えがあることを、あらかじめD銀行担当者にも伝えていた。
若い世代へ引き継ぐために、承継時まで収益力の向上に向けた継続的な活動をすること、組織内事項の決定に際して、今後は組織的な経営(経営者の独断で決定を排除)や外部コンサルティング(商工会などを活用)の採用も実施することも宣言して、一部を実行していた。
これらはD銀行の担当者をはじめとして金融機関の判断を好転させる要因になった。

 

プロフィール

一般社団法人 多摩経営工房(多摩ラボ)

中小企業診断士、社会保険労務士、税理士、ITコーディネータ等の資格を持つプロのコンサルタント集団で構成されている。
さまざまな分野や業種での実務経験が豊富な専門家が、日本経済を支える中小企業の役に立ちたいという強い意思と情熱を持ち、また日本の中小企業が持つ優れた技術やサービスを広く海外に展開し、国際社会にも寄与すべく以下の活動を行っている。

  • 多摩地域の企業の経営課題解決のため、地元密着でサポート
  • 企業と行政・金融機関などを繋ぐパイプ役として、また専門的知識を活用した中小企業施策の活用支援など、幅広い活動を通して企業発展を支援

多摩経営工房(多摩ラボ)ホームページ
http://tama-labo.jp/

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プロフィールページ:落合 和雄(落合和雄税理士事務所)