法律や税務などの専門家に 「顧問になってほしい」 というみんなの要望に応える顧問情報サイト
みんなの顧問とは?

事業承継、ソコが聞きたい! 第8回 金融機関とのやりとり(1)「事業承継と金融機関」

 

事業承継をする際に、金融機関が関係者であったり、金融機関からの支援が必要になったりする場合もあります。今回からは事業承継における金融機関との協議についてご紹介します。

金融機関とのやりとりの重要性

金融機関は、事業承継においても重要な関係者の1つです。
また、金融機関は、事業承継の支援機能も持っているため、必要な助言や支援を行うことができます。したがって、金融機関との信頼関係づくりは、事業承継を成功させる大事なポイントになります。

事業承継の際に苦労した点

会社が銀行や信用金庫などの民間の金融機関と取引がある場合には、事業承継の段階に応じて金融機関と対話をして、協力を得ることが大切です。

事業承継以前の金融機関とのコミュニケーション

企業経営では、経営者の急死などにより、準備なく事業承継が必要になるリスクが常にあります。
経営陣が定期的にメインバンクと情報交換を行い、良好な関係を維持しておくと、いざという時に役に立ちます。
事業承継時にどのような支援が金融機関から受けられるかを尋ねたり、相続税の納税資金について相談したりするなどで、経営者が事業承継に対するリスクを認識していることが伝わります。
このような日常的な対話を通して、金融機関は期待されているという気持ちが高まり、信頼関係を厚くすることができます。

準備段階のコミュニケーション

事業承継の具体的な時期は未定であっても、後継者を指名した段階で、金融機関へ後継者を紹介します。金融機関に後継者を紹介し、事業承継することを明示することで、以下のメリットが得られます。

  • メリット(1)「事業承継に着手したことを明示できる」
  • メリット(2)「経営状況、個人資産状況の整理を手伝ってもらえる」
  • メリット(3)「会社の強みの把握や事業の磨き上げへの助言をもらえる」

これらのメリットについて具体的に解説します。

メリット(1)「事業承継に着手したことを明示できる」

後継者を紹介するということは、会社が事業承継に対して準備段階に入ったことがわかるので、事業承継の支援プログラムがある金融機関は支援準備に入ることができます。指名された人も明確にされれば、金融機関側も後継者を意識するようになります。

メリット(2)「経営状況、個人資産状況の整理を手伝ってもらえる」

事業承継の計画を立てるために、現在の経営状況や個人資産の状況を正確に把握することが大切になります。事業承継に着手したことをあらかじめ金融機関に示しておけば、このような経営状況や資産状況の把握についての金融機関に相談もやりやすくなります

メリット(3)「会社の強みの把握や事業の磨き上げへの助言をもらえる」

事業承継のために後継者を紹介するタイミングで、あらためて今の会社の強みは何であるのか、会社が行っている事業にどのような価値があるのかを考える良い機会になります。
後継者は、事業の将来性に対して不安を持っています。経営に携わって来た経営者の視点だけでなく、金融機関など第三者から見た評価も取り入れることで、広い視野で今後の事業の方向性を考えることができます。近年、金融庁の『金融仲介機能のベンチマーク』により、金融機関も事業性評価を重視した経営が求められているため、金融機関からの協力が期待できます。

事業承継計画の様式
※様式は独⽴⾏政法⼈中⼩企業基盤整備機構のサイトから⼊⼿可能。

事業承継の時期を決定したら

事業承継の時期の決定後、具体的な承継プランや金策について金融機関とのコミュニケーションが必要です。

事業承継の計画を立てる

事業承継を行う時期を決めたら、事業承継計画を作成します。金融機関も交えて、具体的な事業承継の課題に取り組みます。

金融機関とのコミュニケーション(1)「金融機関に事業承継計画を説明する」

会社が事業承継に計画的に取り組んでいく姿勢を示すことで、金融機関からの協力を得やすくなります。事業承継への考え方や取り組み方の方針などをはじめとして、考えられうる課題や解決案に対して金融機関に説明していきます。

金融機関とのコミュニケーション(2)「債務の圧縮、個人保証の解除について相談する」

債務と個人保証の問題は、事業承継での重要課題の1つです。
中小企業基盤整備機構の『経営者保証ガイドライン』(https://hosyo.smrj.go.jp/)を参考にして、債務の圧縮や個人保証の解除について会計の専門家とも協議の上、金融機関と粘り強く相談します。

金融機関とのコミュニケーション(3)「事業承継のための資金を調達する」

事業承継を進めるためには、さまざまな資金が必要になります。
『経営者保証ガイドライン』を参考にして、できるだけ経営者の個人保証に依存しないで資金を調達します。事業承継に関係する資金には次のようなものがあります。

  • 「事業承継前に自社の磨き上げのためにかかる投資資金」
  • 「相続に伴い分散した株式や事業用資産の買取り資金」
  • 「先代経営者の所有する株式や事業用資産にかかる相続税の支払い資金」
  • 「事業承継後に経営改善や経営革新を図るための投資資金」

事業継承後の金融機関とのコミュニケーション

事業を承継した直後では、金融機関は新しい経営者の経営手腕に対して懐疑的です。
新しい経営者は、金融機関をうまく利用して、自らの経営手腕を磨きつつ、事業の盤石化に取り組みます。

事業承継後のコミュニケーション(1)「中期経営計画を立案し、説明する」

事業を引き継いだ直後は、さまざまな経営課題が噴き出す時期でもあります。
中期経営計画で明確な目標と実施計画を示し、その計画をさまざまな関係者と共有しながら経営に取り組む姿勢を見せることは経営者の信頼形成につながります。

事業承継後のコミュニケーション(2)「定期的に経営状況を説明する」

定期的な金融機関への経営状況の説明や相談は、金融機関との信頼関係を厚くすることにつながります。
決算書ができたときや金融機関の担当者が代わったときには、金融機関に対して経営者が自ら経営状況を説明することが大切です。

事業承継後のコミュニケーション(3)「適度な借り入れを行う」

取引がある金融機関とは、適度な資金を借り入れるなど安定的な取引をすることで関係性を維持できます。
借り入れを着実に返済したという取引実績は、金融機関との絆を太くすることにつながります。

プロフィール

一般社団法人 多摩経営工房(多摩ラボ)

中小企業診断士、社会保険労務士、税理士、ITコーディネータ等の資格を持つプロのコンサルタント集団で構成されている。
さまざまな分野や業種での実務経験が豊富な専門家が、日本経済を支える中小企業の役に立ちたいという強い意思と情熱を持ち、また日本の中小企業が持つ優れた技術やサービスを広く海外に展開し、国際社会にも寄与すべく以下の活動を行っている。

  • 多摩地域の企業の経営課題解決のため、地元密着でサポート
  • 企業と行政・金融機関などを繋ぐパイプ役として、また専門的知識を活用した中小企業施策の活用支援など、幅広い活動を通して企業発展を支援

多摩経営工房(多摩ラボ)ホームページ
http://tama-labo.jp/

関連記事(事業承継、ソコが聞きたい!)

関連記事(著者プロフィール:多摩経営工房(多摩ラボ)メンバー

プロフィールページ:落合 和雄(落合和雄税理士事務所)