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事業承継、ソコが聞きたい! 第7回 後継者への継承方法(2)「種類株式の活用」

 

前回は、後継者への経営権の承継のしかたとして、代表権の移行と会社の株式の生前贈与や相続、株式の売買、経営承継円滑化法などについて解説しました。
今回はさらに「種類株式」の活用方法をご紹介します。

種類株式の活用

後継者に議決権を集中させて、安定的な立場を維持するためには「種類株式」の活用も有効な手段となります。種類株式は法律用語ではありませんが、複数の種類の株式を発行することです。
種類株式には以下があります。

  1. 「譲渡制限株式」
  2. 「議決権制限株式」
  3. 「拒否権付株式(黄金株)」
  4. 「取得条項付株式」

これらの種類株式の利用法を紹介しましょう。

譲渡に制限がある「譲渡制限株式」

「譲渡制限株式」は、株式譲渡の際、会社の承認が必要という制限を付けた株式です。
この制限を付けることで、株式の散逸や不適切な相手への株式の移転を防止できます。
現在、多くの中小企業はすべての株式に譲渡制限をつける株式譲渡制限会社となっています。

株主総会の議決権に制限がある「議決権制限株式」

株主総会において議決権を行使することができない、または決議に参加できる事項を制限した株式です。
現経営者の相続人が複数おり、後継者以外の相続人にも株式を相続させる事情がある場合など、後継者以外に多くの株式所有者が生じる場合に活用できます。株式が散逸していても、議決権を後継者に集約させておけば経営権は安定させられます。

重要事項の承認ができる「拒否権付株式(黄金株)」

「拒否権付株式(黄金株)」は、会社の重要事項について、拒否権を行使できる株式です。拒否権付株主の承認がなければ株式総会の重要な決議事項について議決できません。

会社が株式を取得できる「取得条項付株式」

一定の事由が生じた場合、「会社」がその株式を強制的に取得できる株式のことです。
代表取締役の変更があった場合をその事由に定めておくと、事業承継の際に株式を特定の者(後継者)に集約させることに活用できます。

種類株式の導入には株主総会の特別決議が必要

これらの種類株式の導入には、株主総会の特別決議が必要となります。
以下に中小企業庁が『事業承継ガイドライン』で例示する株式の譲渡制限時の定款記載例を紹介します。

株式の譲渡制限

第○条 当会社の発行する株式の譲渡による取得については、取締役会の承認を受けなければならない。ただし、当会社の株主に譲渡する場合は、承認をしたものとみなす。

【事例1】議決権制限株式の活用による事業承継の成功事例

(後継者のみに議決権を集中させることに成功したケース)

工業機械部品メーカーの創業社長(75歳)は、高齢となったことから社長を引退し3人の息子のうち専務取締役を務めている長男へ代表取締役を任せたいと考えていました。次男は同社の研究開発部門の責任者を務めていて、三男は全く関係のない大手食品会社に勤務しています。

社長は自社株式を100%保有しており、事業承継にあたり後継者の長男だけに議決権を集中させたいと考えていました。しかし、相続で長男だけに全ての株式を承継させると次男と三男の遺留分を侵害してしまう恐れがあることがわかり、日頃から懇意にしている中小企業診断士と税理士に相談したところ議決権制限株式の活用を薦められました。

長男、次男、三男は日頃から意見の食い違いが多く、株式を3人に承継した場合には長男が代表取締役に就任したとしても重要事項に関する意思決定が迅速にできない懸念がありました。そのため、事前に株主総会の特別決議において社長が保有する自社株の一部を議決権制限株式に転換し、その議決権制限株式を次男と三男に、普通株式は後継者となる長男に取得させることにしました。次男と三男から議決権が無いことについて不満が出ないように優先配当を付したことで遺留分を気にせずに長男に議決権を集中させた自社株式の移転が実現できました。

【事例2】拒否権付株式(黄金株)の活用による事業承継の成功事例

(先代経営者のモニタリング期間を置いたケース)

インテリア雑貨輸入販売会社の創業者である社長(68歳)は、駅前のテナントビルへの出店戦略が功を奏し順調に売上を伸ばしてきましたが、体調面の不安から、長男へ社長職を譲り引退したいと考えていました。しかし、経営者としての知識や経験が不充分であることから経営権を全面的に手渡すことに不安をもっていました。

そこで事業承継に詳しい中小企業診断士へ相談したところ、経営権を承継した後も現社長が拒否権付株式(黄金株)を保有することを提案されました。後継者が経験不足で危なっかしいと感じる場合、一定の期間現社長が拒否権付株式(黄金株)を保有する事で重要事項についての拒否権を握ることができます。

これを受けて拒否権付株式(黄金株)を手元に残し、長男へ経営権を承継しました。長男は社長となった後、重要な経営判断を迫られる場面で時折前経営者へ相談することがありましたが、経営者としてのリーダーシップや交渉力に長けている事がわかりました。

数年後、長男の経営者としての能力に安心して全面的に経営権を長男に委ね、会社は長男の経営のもと順調に成長を続けています。

プロフィール

一般社団法人 多摩経営工房(多摩ラボ)

中小企業診断士、社会保険労務士、税理士、ITコーディネータ等の資格を持つプロのコンサルタント集団で構成されている。
さまざまな分野や業種での実務経験が豊富な専門家が、日本経済を支える中小企業の役に立ちたいという強い意思と情熱を持ち、また日本の中小企業が持つ優れた技術やサービスを広く海外に展開し、国際社会にも寄与すべく以下の活動を行っている。

  • 多摩地域の企業の経営課題解決のため、地元密着でサポート
  • 企業と行政・金融機関などを繋ぐパイプ役として、また専門的知識を活用した中小企業施策の活用支援など、幅広い活動を通して企業発展を支援

多摩経営工房(多摩ラボ)ホームページ
http://tama-labo.jp/

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プロフィールページ:落合 和雄(落合和雄税理士事務所)