知的財産、ソコが聞きたい! 第8回 特許編「特許の使い方と取得方法」
前回は、日本と世界の特許制度についてご紹介しました。今回は、特許を取得するにあたってのメリットやデメリット、特許の取得方法などを解説します。 |
目次
特許のメリット
「他者のコピーや模倣の防止」
特許を取得する際の一番大きなメリットは、他人が勝手に製品をコピーしたり模倣したりすることを防止できる点です。
また、特許を持っていれば、他人が自社の製品特許を侵害した場合に、その侵害行為をやめさせる差止請求ができます。
差止請求とは、特許や商標、著作権などへの侵害行為に対して、その侵害をやめるように請求できる権利で、差止請求によって特許を侵害する製品の製造販売を停止させることや、特許を侵害する製造設備などを廃棄させることもできます。
こうして自社の技術や製品を法的に守ることができるのが、特許の一番のメリットといってもいいでしょう。
「侵害発生時の他社との交渉材料」
特許のもうひとつのメリットは、自社製品が万が一、他社の特許権を侵害した場合に、こちらの特許権の自由使用と引き換えに、相手の特許権を自由に使用できる交渉カードとして使える点があります。
同じ発明については、ひとつの特許の権利を別々な人がそれぞれ出願して持つことはできません。一方、ひとつの製品の異なる技術について二つ以上の特許権が設定されることもあります。
つまり、お互いに自由に特許権を使えることにして、タッグを組んで市場を開拓する交渉材料に使えます。新製品の発売後の交渉材料がないため、他社との協業ができずに製品を製造できなくなる、というようなリスクがなくなります。
「自社の技術力の証明」
特許の取得は、製品開発者の技術力の高さを証明することにもなります。
たとえば「特許取得済」と表示すれば、その会社や開発者が高い技術力を持っていることが証明でき、アピールすることができます。営業面で見ても、通常は取引がむずかしいような大手企業との取引材料になるなどのメリットもあります。また、優秀な特許を保有していれば、投資家や金融機関から融資を受けやすくなる場合もあります。
その製品や技術が優秀で、特許に価値があればあるほど、特許を持つメリットは大きくなると言っていいでしょう。
特許のデメリット
「発明の公開」
特許を取るにあたり、その発明を世間に公開しなければなりません。
もし、発明を他人に知られないようにしておきたい場合は、特許を取得するべきではありません。また特許の登録から20年後には、その発明は誰もが使えるようになります。
このため、場合によっては社外秘のノウハウとして発明を守り抜くほうが良い場合もあります。
「費用と時間がかかる」
特許を取得するには、費用と時間がかかるものです。
特許を出願するために必要な、特許庁や特許事務所に払う費用などの総額は、数十万円以上となることがあります。特許の内容や規模などによっては、さらに何倍、何十倍とコストがかかる場合もあります。
また、取得までの期間は1年以上かかります。
1人だけで特許の出願の手続きをすべて行って、費用を抑えることは不可能ではありませんが、特許は知識や経験のない人が簡単に取れるようなものではないので、現実的な考えではないといえます。
また、日本国内で特許を取った場合には、第三者がコピーあるいは模倣の特許を海外で取得してしまうというリスクがあります。これを防ぐには、日本だけでなく海外の各国でも特許を取得するしかありません。そうなると、さらに費用がかさむことになります。
したがって、特許を取る場合には、それなりのコストを踏まえて考えておく必要があります。
特許の取得方法
特許を取得する場合の手順は、以下のような流れになっています。なお、出願から取得までの期間のめやすは1年から2年くらいです。
「特許の出願」
最初に特許庁に特許出願をします。出願日から1年6ヶ月経過すると出願内容が公開されます。この後、発明品を無断で使用した者に対して補償金を請求できる権利を請求できる場合があります。
「審査請求」
出願日から3年以内に行います。
「実体検査」
出願された発明に特許を与えるべきかが審査されます。
審査が通らない場合は、その理由が出願人に送られます。そして、審査結果に対して意見を述べる意見書や、出願内容を補正する補正書を提出する機会が与えられます。
意見書や補正書を提出しても特許が認可されない場合、さらに審査を請求できます。
「特許取得」
審査が通ると、3年分の特許料を支払います。特許証が交付され、特許された内容を公示する特許公報が発行されます。これで、特許の取得となります。
依頼時には必ず費用の確認をする
特許の取得は一般の人にとっては大変ハードルが高いため、出願の手続きをする際には専門家の助けが必要になります。特許取得の近道は特許専門の弁理士に相談することですが、初回の弁理士の面接などで、必ず「費用の上限」を確認するようにしてください。作業が進むにつれて費用が天井知らずに上がるようでは困りますし、費用を明確に示せないような事務所は避けたほうが賢明です。
次回は総括として、「知的財産のいま」を解説します。
解説者プロフィール
平野泰弘(ひらの・やすひろ)さん
日本弁理士会所属:弁理士登録番号12757号
特定侵害訴訟代理業務付記弁理士。ファーイースト国際特許事務所代表。
大手総合メーカーの知的財産部門の社内弁理士を経てファーイースト国際特許事務所を開設。
特許庁の審査・審判、地裁、知財高裁、最高裁等の代理人受任の実績も豊富で、特許庁出願は5年間で連続1000件以上ある。テレビや新聞をはじめとしてメディア出演、掲載実績も多数。
著書に『社長、商標登録はお済みですか?』(ダイヤモンド社)
事務所ホームページ
https://riskzero.fareastpatent.com/
著書
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