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知的財産、ソコが聞きたい! 第7回 特許編「日本と世界の特許制度」

 

前回は、特許と一緒に語られることの多い実用新案と、意匠権、著作権をお話しさせていただきました。今回は、日本と世界の特許制度の違いなどについて解説します。

日本の特許制度

日本では、1885年(明18)に本格的な特許法である専売特許条例が施行されました。1899年(明32)には旧特許法を制定してパリ条約に加入します。

1922年(大11)に施行された「大正10年法」では、それまでの先に発明した者に権利を与える「先発明主義」を廃止し、先に出願した者に権利を与える「先願主義」を採用して現在の特許法の基礎がつくられました。

そして、1959年(昭34)には、大正10年法が全面的に改正され、現行の特許法と実用新案法になります。現在、ほとんどの国が先発明主義から先願主義へと移行しています。

米国の特許制度

米国はこれまで「先発明主義」を採用してきました。
先発明主義とは、今出願をしていなくても、将来自分の発明が先であることを証明できれば、発明の権利を得られるというものです。これまで先発明主義を採用していた米国も2013年から先願主義に移行しています。

先発明主義には、メリットとデメリットがあります。

メリットは、特許出願にはお金がかりますが、このお金のかかる出願を省略できることです。つまり、財政的に厳しい個人発明家や大学の研究室が保護されているのです。

デメリットは、せっかく発明したのに、それが覆されてしまう可能性があることです。さらに「自分の方が先に発明をした」という主張が出るたびに、いちいち認定をしなければならない手間が発生します。

中国の特許制度

中国は日本と同じ先願主義です。
日本や米国では、特許を所有する権利は原則、発明者にあります。しかし中国では、発明者が所属する企業や組織などに特許が与えられます。

中国は2001年に世界貿易機関(WTO)に加盟しました。WTOは知的財産権を含む貿易全般に関する国際機関です。つまり、WTOの加盟国に課せられる知的財産権が中国にも存在するようになったのです。

中国では、実用新案権と意匠権が無審査です。日本では無審査の実用新案権は出願件数が少ないのですが、中国では特許出願並みに出願件数が多いのが特徴です。日本とは違い、無効審判などで容易に権利をつぶされないのが、出願件数が多い理由の一つです。
また中国での特許権は、新規性や進歩性があまり審査されていない可能性があります。このため、特許権はコストがかかるばかりで、権利の安定性は実用新案権とたいして変わらないのです。

次に、世界におけるコンピュータプログラムの特許の違いに関して解説しましょう。

世界におけるプログラムの保護

日本

日本では2002年の特許法の改正により、「プログラム」を「物」であると定義し、権利保護されるようになりました。

ヨーロッパ

ヨーロッパでは、1998年の欧州特許庁審判部における「IBM審決」により、コンピュータのシステムに特許の可能性があることが認められました。これ以降、ヨーロッパ特許庁は多くのソフトウェア特許を認めるようになりました。

米国

米国では、1990年代初頭までにソフトウェアの特許性が確立されました。インターネットと電子商取引により、ソフトウェアやビジネス方法に関する発明が出願されるようになったのです。
さらに米国で起きた1998年の「ステート・ストリート・バンク事件」で、ビジネスモデル特許が注目されました。それまでの「ビジネスの方法は特許対象から除外する原則」は無効であるとされ、ビジネスモデル特許が知られるようになりました。

中国

中国は、2017年4月に特許審査基準のプログラムに関する部分を改訂しました。
これにより、「プログラムと協働する装置の装置クレームの記載要件が緩和される」ことになりました。また、ビジネスモデルも含めてプログラムを記録した記録媒体が特許の対象となりました。

次回は、特許のメリットについて解説します。

解説者プロフィール

平野泰弘(ひらの・やすひろ)さん
日本弁理士会所属:弁理士登録番号12757号
特定侵害訴訟代理業務付記弁理士。ファーイースト国際特許事務所代表。

大手総合メーカーの知的財産部門の社内弁理士を経てファーイースト国際特許事務所を開設。
特許庁の審査・審判、地裁、知財高裁、最高裁等の代理人受任の実績も豊富で、特許庁出願は5年間で連続1000件以上ある。テレビや新聞をはじめとしてメディア出演、掲載実績も多数。
著書に『社長、商標登録はお済みですか?』(ダイヤモンド社)

事務所ホームページ
https://riskzero.fareastpatent.com/

著書

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弁理士 平野 泰弘