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中小・零細建設業の倒産は増加傾向!資材価格高騰・職人不足問題などの影響とは

廃屋を取り壊している写真

近年、建設業界における企業の倒産件数が増加傾向にあることはご存じでしょうか。2025年1月に総務省が発表した労働力調査では、建設業に従事する就業者が前年483万人から1.24%減の477万人となっており、業界の「職人不足」が懸念されています。

また、就業者は常態的に「高齢化」が進んでおり、2024年の建設業における就業者は60歳以上が驚くことに25%超となっています。加えて、円安進行などの影響により建設資材は高騰しており、複合的な要因が絡み合った結果、倒産が増加しているのです。

本記事では、建設業の倒産が増えている背景について、資材価格の高騰や職人不足の問題を交えながら、建設業の経営成功に向けたリスク対策もあわせて解説します。

参考URL 総務省統計局 労働力調査 基本集計 全都道府県 全国 年次 2-2-1 年齢階級,産業別就業者数(2007年~)-第12・13回改定産業分類 

建設業の倒産増加|中小・零細の建設業が苦境に立たされている原因とは

建設業界は、長らく続いている職人・人手不足や高齢化の問題に加え、近年は国際情勢や為替変動の影響も受けています。特に中小・零細建設業が倒産に追い込まれる背景には、以下のような複合的な要因があります。

深刻な職人・人手不足と高齢化

現在日本の建設業界全体で若年層の入職者が少なく、職人の高齢化が急速に進んでいます。これにより、経験豊富なベテラン職人の引退が進む一方で、新しい職人の育成が進まない状況が続いています。

優秀な人材を確保するためには人件費も上げざるを得ず、中小・零細企業の経営を圧迫する要因になっています。

ベテラン職人の引退は、長年培われてきた技術やノウハウの喪失にもつながり、会社経営にも深刻なダメージを与えています。また、必要な職人数が確保できないことによる工期の遅延・品質の低下など、履行責任のリスクも増大しています。

資材の高騰

新型コロナウィルスの影響も大きかったウッドショックや、ロシア・ウクライナ情勢など、建設現場に必要な資材はさまざまな影響を受けて高騰が続いています。

また、円安の進行も見られ、木材に限らず鉄骨やセメントなど、あらゆる資材の価格が上昇し、建設コストを押し上げています。実際に国立劇場や中野サンプラザなどの有名施設も資材をはじめとする工事費の高騰が直撃し、計画に大きな乱れが生じています。

大手建設会社であれば大量仕入れによる価格交渉力や、複数のプロジェクトで利益を確保できますが、中小・零細企業は1つの工事の乱れによる影響が大きく、倒産の引き金になる傾向があります。

参考URL NHK WEB特集「伝統芸能の拠点」国立劇場建て替え問題で危機
参考URL 朝日新聞 中野サンプラザ建設費高騰の衝撃 「前例ない」うなだれた野村不動産

その他

上記の理由に加え、以下のような要因も中小・零細建設業の経営を苦しめています。

① 価格転嫁の難しさ

中小・零細建設業の多くは下請けの立場にあります。契約時の見積もり提出後に資材価格が急騰しても、元請けや施主に対し、その上昇分の支払いを求めることがこれまでの付き合いや、今後の発注も期待せざるを得ない間柄では困難なケースもあります。

② 金利上昇も直撃

長らく日本国内は「低金利」が続いていましたが、現在金利は上昇傾向にあります。今後もこのような傾向が続くと、住宅ローンの金利上昇への懸念などから建設需要が低迷し、経営に影響するおそれがあります。

③ エネルギー価格の高騰

建設現場で重機を動かす燃料費や電気代など、建設工事には多くのエネルギーを消費します。原油価格の高騰や電気代の上昇も資材費に加えて直接的に建設コストを押し上げ、経営を圧迫しています。

倒産の背景にある中小・零細建設業特有の問題とは

現在日本の中小・零細建設業が倒産の増加に直面しています。帝国データバンクによると、2024年の建設業における倒産件数は過去10年で最多の1890件にまで上っており、イスラエル・イラン情勢も加味されることから今後も悪化することが懸念されます。

では、中小・零細建設業が抱えている特有の問題とはどのようなものでしょうか。この章で詳しく解説します。

参考URL 帝国データバンク「建設業」倒産動向調査(2024年)2024年建設業倒産 1890件 過去10年で最多

資金繰りの悪化に陥りやすい

中小・零細企業は、大手企業と比較して手元の資金が潤沢でないことが多く、資材・人件費の高騰や施工の遅れなどが引き金となり、倒産に至るリスクを抱えています。

さらに、新型コロナウィルスをきっかけに発生した「ゼロゼロ融資」は2024年以降に融資の返済が本格化したことで、経営に大きな打撃を与えています。資金繰りをカバーするために金融機関からの借入に依存する傾向も強く、金利変動の影響を受けた結果倒産に至るケースも見受けられます。

DX化・IT化の遅れ

建設業界全体でDX(デジタルトランスフォーメーション)化の推進が叫ばれていますが、中小・零細企業では依然としてIT化の遅れが目立ちます。

デジタル製品の導入や運用に精通している人材の確保にも遅れが生じており、アナログ対応が多いことも経営に影響しています。

特に生成AIの急速な進化に対して、建設業界のみならず多くの中小企業に対応の遅れが生じています。

経営者や職人の高齢化でDX化やIT化の導入コストにも二の足を踏んでいる可能性もあり、他社との競争力の低下も倒産の引き金となっていると考えられます。

建設業の経営を成功に導く!リスク管理と専門家の活用

日本全体を支えている建設業は、今後もインフラや住まいなどを維持・新規建設を目指していく上で大切な存在です。直面しているさまざまな課題を乗り越えていくためには、リスク管理が欠かせません。そこで、考えられる対策は「専門家の活用」です。

この章では建設業の経営を成功に導くために欠かせないリスク管理と専門家の活用について詳細を解説します。

リスク管理の強化

ゼロゼロ融資の返済や労務関係のコスト・管理、資材などをはじめとするコストの増加など金銭的な課題を解決するためには、自社の経営戦略を定期的に見直し、潜在的なリスクを早期に克服することが大切です。

特に国際情勢の影響が大きい資材面については、過去のデータに基づくだけでなく、将来の価格変動リスクを織り込んだ見積もり作成が必須です。また、元請けなどに対して高騰した資材費などを適切に価格転嫁できるよう、粘り強く交渉する力が求められます。

さらに、徹底したコスト削減と業務効率化も欠かせません。無駄な経費を徹底的に洗い出し、見直すことが大切です。

専門家の活用

自社だけでは交渉が難しい、返済や労務コストの見直しに悩んでいるなど、専門知識が必要なケースでは、外部の専門家の力を借りることも大切です。

資金繰りの相談や受けられる融資のアドバイス、返済計画などについては税理士・会計士の強力なサポートを受けることが望ましいでしょう。

また、元請けなどとの契約トラブルや労務問題、債権回収や交渉など法的な問題が発生にも備え、弁護士との協力体制を構築することも大切です。

特に国際情勢や金利上昇など多くの変化が直撃しやすい今、価格転嫁に備えた契約書チェックなども弁護士に相談しながら進めるべきでしょう。

まとめ

本記事では、建設業の倒産が増えている背景について、資材などの高騰や職人不足の問題を中心に、経営成功に向けたリスク対策も交えて解説しました。建設業界は倒産の増加傾向が見られ、全国の中小・零細建設会社がさまざまな問題を抱えています。

危機管理を高めていくためには、高齢化や職人不足を補うDX化・IT化を推進し、業務効率化や生産性向上を図る必要があるでしょう。

また、荒波続きの経営を乗り越えていくためには、税理士や弁護士といった専門家のアドバイスを受けながら進めていくことが大切です。

 

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この記事を書いた人:法律ライター 岩田いく実

損害保険会社勤務後、法テラスや一般民事系法律事務所でのパラリーガル経験を経て、法律ライターとして独立。交通事故被害者の家族として携わった高額訴訟の経験も生かし、年間60人を超える弁護士への取材も行い、書籍への執筆も行っている。
相続・交通事故や債務整理分野などを中心に記事制作活動を展開中。

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