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【データで判明】スタートアップと顧問弁護士の実状と中小企業が抱える法的リスクと「活用格差」の正体

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グローバル化や生成AIの登場によって、現在ビジネス環境は急速な変化を遂げています。こうした変化に伴い、国内においてはスタートアップや中小企業を取り巻く「法務」の環境も変革の中にいます。

国内外を横断するサービスも多くなっており、法的リスクはこれまで以上に高まっています。そこで、本記事ではスタートアップと中小企業に焦点を当て、顧問弁護士の実情や法務を活用する際の企業間格差に注目します。

目次

イントロダクション:データで見る「スタートアップ法務のいま」

クラウドサービスの普及、生成AIや国境を越えたサービス展開が進む現在、法務はもはや企業活動の「サポート機能」ではなく、戦略的に経営を判断するための欠かせない存在となっています。そこで、本章では令和7年5月に法務省司法法制部が公表したデータをもとに、スタートアップと法務の最前線について解説します。


出典:法務省
「新たな法的ニーズの把握及び法曹に期待される役割を検討するための調査結果報告」令和7年

※本記事は、上記ページに掲載されている以下の調査資料を参照しています。

スタートアップ・中小企業を取り巻く法務環境の激変

法務省が令和7年に実施したアンケートでは、スタートアップ企業の現場では「法務の重要性や弁護士を活用することの必要性」が高くなっているという声が多いと判明しています。
トラブルの解決だけでなく、事業戦略や成長加速のために欠かせない存在となっており、
アンケート結果では90.6%が、過去に弁護士を利用したことがあると回答しています。

ただし、スタートアップ企業が求める法務に対応できる弁護士数はまだ少ないと感じているという課題があります。これはスタートアップ企業が求めるリーガルチェックや資金調達といった業務は弁護士の報酬に結び付きにくく後回しにされるという背景も影響していると考えられます。

一方で中小企業の場合、弁護士を利用したことがあるとの回答は40.4%に留まっており、スタートアップ企業よりも低調です。この背景には弁護士は訴訟を専門に受任するイメージが高く、中小企業が抱えている問題を「弁護士に相談する問題」だとは連想しにくい点が挙げられます。

スタートアップにおける弁護士活用の必要性に関する認識の高まり

スタートアップ企業の多くは弁護士を利用しています。具体的に、利用した場面では契約内容の相談・検討や契約書の作成が86.9%を占め、株主総会や取締役会の運営(50.0%)、知的財産関連(36.6%)、雇用問題(34.2%)などが続きます。

これらのデータから、スタートアップは事業拡大に伴う契約・ガバナンスの強化に弁護士を活用していることが読み解けます。

法務省の最新調査から見えるリアル

法務省が実施したアンケートでは、スタートアップ企業と中小企業全体の法務実態が鮮明に浮かび上がっています。スタートアップ企業の中で弁護士利用経験者のうち78.2%が顧問弁護士契約を結んでおり、継続的な法的パートナーシップを構築していることがわかります。

弁護士利用の満足度も極めて高く、利用経験者の50.3%が「大いに満足した」、44.3%が「まあ満足した」と回答(合計94.6%)しています。このような点から、今後もスタートアップ企業における弁護士ニーズは拡大すると考えられます。

一方、中小企業全体でいまだ利用率は低く、スタートアップと中小企業との間には「弁護士活用の格差」があります。

スタートアップ企業にとっては、すでに弁護士が「緊急時にのみ頼りたい存在」ではなく「信頼できる経営パートナー」として欠かせない存在となっており、社会が急速に変化している今、中小企業も弁護士に相談する時代を迎えていると考えられます。

データが示すスタートアップにおける法的ニーズの現状

スタートアップ企業は弁護士に寄せている期待は大きいと考えられますが、具体的にデータが示している法的ニーズとはどのようなものでしょうか。本章でさらに深堀します。

スタートアップは90.6%が、過去に弁護士を利用したことがあると回答

冒頭に触れたように、調査対象のスタートアップ企業の実に9割に上る90.6パーセントが過去に弁護士を利用しています。

スタートアップ企業はAIや最新テクノロジーを用いたサービスを軸に経営していることが多く、事業のスピードとリスクの複雑化に対応するために弁護士活用が標準化していると考えられます。

創業時からシード期、レイター期まで幅広い成長段階で利用されており事業が成熟する前から弁護士を置く活用をしている点も注目ポイントでしょう。

多くが東京等の都市部の弁護士に相談している

地方に拠点を置くスタートアップ企業であっても、東京をはじめとする都市部の弁護士に相談している実態もこのデータによって判明しています。調査では、「スタートアップの法的ニーズに対応できる弁護士が地方に少ない」とわかっており、地方のスタートアップ企業は都市部の弁護士を頼らざるを得ないのです。

地方は訴訟中心の法律事務所が多く、スタートアップのニーズに対応できる法律事務所が少ない傾向があります。結果として、地域格差が弁護士アクセスの格差を生み、都市部近郊のスタートアップがより有利な法的支援を受けやすい「活用格差」の一因となっています。

中小企業全体では過去に弁護士を利用したことがあると答えたのは40.4%にとどまる

中小企業全体では過去に弁護士を利用したことがある企業はわずか40.4%に留まり59.6%が未利用です。顧問契約を結んでいる割合も利用経験者は45.1%と、スタートアップの78.2%に比べて大幅に低く、スポット依頼(48.6%)が主流となっています(p.57)。

相談内容は契約関連31.3%、雇用問題25.3%、債権回収22.0%と、スタートアップに比べて守りの法務(トラブル対応型)が中心です。

データからは、スタートアップ企業では弁護士を継続的に活用する傾向が見られる一方で、中小企業全体では問題が顕在化した段階で弁護士に相談するケースが多いことがうかがえます。

【深掘り】顧問弁護士を活用している企業の「満足度」と「具体的活用例」

本章では顧問弁護士の存在に注目し、実際に活用している企業の満足度や具体的活用例をデータからピックアップします。

顧問弁護士を活用しているスタートアップ企業の満足度は極めて高く、利用経験者のうち50.3%が「大いに満足した」、44.3%が「まあ満足した」と回答し、合計94.6%が満足と回答するに至っています。

一方の中小企業における満足度は全体で79.4%と低めで、スタートアップ企業との「活用格差」が満足度の質でも顕著に表れています。

迅速な対応が満足度を分ける: チャットツール活用による「即レス」の重要性

スタートアップ企業では「対応スピードの早さ」を弁護士選択の大きな理由(46.6%)に挙げており、中小企業の25.5%を大きく上回っています。迅速な経営判断には回答の速さが欠かせないためでしょう。

ヒアリング調査では、若手弁護士がスタートアップ企業に好まれる理由として「意思疎通がしやすく、スピード感を持って対応できる」「フットワークの軽さ」が挙げられており、チャットツールを活用した素早いレスポンスができる弁護士が好まれる傾向があります。

戦略的法務の実状: 単なるトラブル処理ではなく、資金調達やM&A、新規事業の適法性審査への関与

スタートアップ企業における顧問弁護士の役割は、トラブル処理を超えた戦略的支援にあります。相談内容では契約関連が86.9%を占めるものの、株主総会・取締役会の運営(50.0%)、知的財産関連(36.6%)、内部規程・コンプライアンス(34.2%)と、ガバナンスや成長戦略の基盤固めが目立っています。

将来的な相談意向でもM&A(29.8%)が上位に挙がり、ヒアリングでは「投資関連契約の実務が重要」「新規ビジネスモデルの適法性を早い段階から検討する必要がある」との声が多くなっています。

弁護士を「経営のサポーター」として位置づけ、資金調達時の投資契約審査や新規事業のリスク洗い出しに積極的に関与させている実状です。これにより、中小企業に見られる守りの経営ではなく「事業を前に進めるための攻めの経営」が実現されています。

信頼のバッジ: 顧問弁護士の存在が、対外的な信用(VCや大企業取引)にどう寄与しているか。

顧問弁護士の存在は、対外的な「信頼のバッジ」としても機能しています。スタートアップ企業はVCやエンジェル投資家からの出資時において、しっかりした契約書やコンプライアンス体制を用意し企業の信用を高めることが、資金調達の信頼性向上につながるケースがあると指摘されています。

また、大企業との取引やアライアンスでは、社内の法的基盤が整っていることが交渉を有利に進めることにつながります。弁護士の存在が見えることで、こうした経営戦略の整備につながっており、信用面でも重要な存在となるのです。

顧問弁護士を「持てない・持たない」企業の事情と機会損失

スタートアップ企業で顧問弁護士の非利用者(9.4%)や中小企業の未利用者(59.6%)は、なぜ顧問弁護士を持たないのでしょうか。本章では企業の事情や弁護士不在による機会損失に焦点を当てます。

コストとベネフィットの天秤: 「まだ早い」という判断が招く、将来的な高額訴訟リスク

顧問弁護士の役割は、トラブル処理だけではなく戦略的支援でも発揮されます。しかし、スタートアップ企業であっても、顧問弁護士については「まだ早い」「報酬が高い」(スタートアップ19.4%)と判断し、顧問契約を先送りしています。

しかし、実際の経営の現場では、トラブルの発生が大きな損失につながる可能性があります。契約不備やコンプライアンス違反が発覚した際の高額訴訟・損害賠償リスクが、初期投資を上回る損失を生むおそれがあります。

専門性のミスマッチ: 業界知識がない弁護士に依頼してしまった失敗談の実状

法務については専門としない弁護士も多く、業界知識がない弁護士への依頼によるミスマッチも起きています。スタートアップでは「スタートアップに対応できる弁護士が少ない」(12.9%)との声があり、伝統的な弁護士に相談した結果、IT・SaaS・AIなどのビジネスモデルを正しく理解されないケースもあります。

多くの経営者が「顧問弁護士はまだ早い」と判断する一方で、実際には手遅れになるケースも少なくありません。自社の成長段階において、どのタイミングで守りを固めるべきかは、以下の記事で詳しく解説しています。

具体的な導入フェーズを知りたい方はこちら

失敗しない「スタートアップ向け弁護士」の選び方

これからの企業の成長を大いに支えるスタートアップ向けの弁護士を選ぶためには、いったいどのような点に注目すべきでしょうか。本章でわかりやすく紹介します。

ビジネスへの理解度: IT、SaaS、AIなど最新のビジネスモデルを理解しているか

今回の調査では「貴社業界や業務を理解している」が満足度のトップ(52.7%)となっており、若手弁護士が好まれる理由として「新しい事業を理解して共感できる」点が挙げられています。

つまり、従来の伝統的な弁護士では対応しにくいイノベーション領域で、専門性を持っている弁護士を探すことが大切です。IT、SaaS、AIなど最新のビジネスモデルに深い知見や経験がある弁護士を検索しましょう。

柔軟な報酬体系: 月額固定、タイムチャージ、スポット対応の使い分けの実状

月額固定だけではなく、タイムチャージやスポット対応など、スタートアップの資金状況に合わせたプランを弁護士側が用意しているかも確認が必要です。調査の満足理由に「報酬額が妥当、割安」(45.0%)が入るように、双方が納得できる報酬契約を結ぶことが信頼関係を構築するためにも重要でしょう。

コミュニケーションコスト: 代表者と価値観が合うか、スピード感は一致しているか。

スタートアップ企業と弁護士側の価値観が合うか、スピード感は一致しているかについても確認が必要です。チャット活用の有無やレスの頻度、夜間・週末対応の可否なども長期関係を左右します。スタートアップ企業において、弁護士の存在は「気軽に相談できる相手」の若手弁護士が理想という声もあります。

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結論:法的資本を「経営資源」に変えるマインドセット

スタートアップ企業や中小企業において、弁護士への依頼や顧問契約はコストとして捉えがちです。しかし、弁護士の存在「コスト」ではなく「攻めのための投資」と考えましょう。特に自社を深く理解する顧問弁護士は企業基盤を支える重要なパートナーになります。

中小企業は弁護士の活用がスタートアップ企業と比較すると低調ですが、法的資本を経営資源として位置づけるマインドセットが不可欠です。早期に法務基盤を整えた企業ほど、トラブル回避による成長速度を維持できます。今こそ企業に寄り添う弁護士を探してみませんか。

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この記事を書いた人:法律ライター 岩田いく実

損害保険会社勤務後、法テラスや一般民事系法律事務所でのパラリーガル経験を経て、法律ライターとして独立。交通事故被害者の家族として携わった高額訴訟の経験も生かし、年間60人を超える弁護士への取材も行い、書籍への執筆も行っている。
相続・交通事故や債務整理分野などを中心に記事制作活動を展開中。

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