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タレントとプロダクション 第3回「芸名(アーティスト名)の商標登録とは?」

 

みなさんは、タレントやアーティストが自身の芸名を巡って所属プロダクションともめているといったことを耳にしたことがありませんか?
古くは加勢大周さんに関するトラブルや、次回の連載で詳述する加護亜依さんに関するトラブル、最近では能年玲奈さんに関するトラブルなどが挙げられるかと思います。
特に加勢大周さんと加護亜依さんに関しては、所属プロダクションに芸名を商標登録されていたという事情がトラブルの大きな原因になっていたと思われます、
そこで連載第3回目の今回は、【芸名の商標登録】についてみなさんと一緒に考えてみたいと思います。

タレント本人ではなく第三者である所属プロダクションが芸名を商標登録できるのか?

初めに、そもそもタレント本人ではなく第三者である所属プロダクションが当該タレントの芸名を商標登録できる理由について簡単に説明したいと思います。
まず、タレント本人の人格権を保護する見地から、本人以外の第三者がタレントの芸名を商標登録することは原則として認められていません。
もっとも、本人の承諾がある場合には第三者の名前で商標登録することが可能となります(商標法4条1項8号)。そのため、芸能プロダクションはこの規定に基づき所属タレントの芸名を本人の承諾を得た上で商標登録しているのです。

芸能プロダクションがアーティストやタレントの芸名を商標登録する理由は?

では、芸能プロダクションが所属タレント等の芸名を商標登録するのは何故なのでしょうか?
その理由は連載第2回でお伝えした【競業避止義務規定】が盛り込まれる趣旨に加えて商標法固有の趣旨にあります。
具体的には、芸能プロダクションは所属タレントに対して定期的なレッスンなどの育成や各所への売り込み等、所属タレントが知名度を上げるまでに多額の先行投資を行っています。そのため知名度を上げたあとすぐにそのタレントに事務所移籍や独立などをされると、それまでにプロダクションが費やしてきたお金や労力が無駄になってしまいます。これを防ぐために設けられるのが競業避止義務規定です。
また、プロダクションが所属タレントの芸名を商標登録すると、当該プロダクション以外の者がそのタレントと同一の芸名を用いて芸能活動等をすることができなくなるため、プロダクションの既得権獲得やそれまで築かれてきたタレント等のブランドイメージの保護を図ることができます。
すなわち、芸能プロダクションによる所属タレント等の芸名の商標登録は、①プロダクションの先行投資が無駄になることを防ぎ、②既得権益やブランドイメージを保護することを目的としてなされているのです。

芸名の商標登録によりアーティストやタレントにどのような不利益が生じるか?

次に、芸能プロダクションが所属タレント等の芸名の商標登録をした場合、当該タレント等にはどのような不利益が生じるのでしょうか?
まずは、上述したように、プロダクションが所属タレントの芸名を商標登録すると、当該プロダクション以外の者がそのタレントと同一の芸名を用いて芸能活動等をすることができなくなることから、当該タレント等が他の事務所に移籍した場合に当該芸名で活動できなくなることが挙げられます。タレント等にとって長年使用してきた芸名の使用が禁止されることは、それまで当該芸名によって培ってきた知名度や影響力、アイデンティティー等を失うことになりかねない事態であり、非常に深刻な不利益と言えます。
また、芸名が所属プロダクションにより商標登録されているにもかかわらず、当該芸名を他の事務所への移籍後に使用し続けると、場合によっては芸名の使用の差し止めや損害賠償請求を受けてしまう可能性もあります。
このように所属プロダクションに芸名を商標登録されると、アーティストやタレントには芸能活動を継続していく上で様々な不利益を被りかねない状況となります。

タレント等に生じうる不利益をどのように解決するか?

では、どのようにすれば芸能プロダクションとタレント等の双方の利害を調整しながら上記の問題を解決できるでしょうか?
考えられる方法としては、

  1. 専属契約を結ぶ時点で、仮にタレントが事務所を辞める場合には商標登録された芸名も伴ってタレント個人に帰属することになる旨お互いに予め合意をしておく
  2. 事務所を辞める際に、芸名の商標だけはタレント個人に譲ってほしいとタレントが交渉する
  3. 他の事務所に移籍したのちに事務所同士が交渉し、移籍後の事務所が商標権の対価を払って芸名を買い受ける
  4. 芸名を変えて活動する

等が挙げられます。
皆さんはいずれの方法が良いと思いますか?
心機一転、④芸名を変えて活動するべきだ!という方は少ないかと思います。
私は結論として、①の方法が良いと考えます。その理由として、まず②の方法は、タレント個人とプロダクションとでは交渉力や力関係などに歴然とした差があることが多く、対等な交渉をすることが難しいと考えられ、商標の譲渡は事実上難しいと思われるからです。
また③の方法は、他の事務所に移籍する頃には当該タレントにある程度の知名度がある場合が多く、移籍前の事務所としては既得権益を守るため、簡単に芸名の商標権を移籍後の事務所に安価な金額で譲渡するとは考えづらいためです(通常交渉は難航します。)。
そして①の方法の積極的な理由付けは次の通りです。まず、タレントの他の事務所への移籍に伴う芸名に関するトラブルが生じるのは、当該タレントが有名になり移籍前のプロダクションにとって大きな収益源となるような既得権保護の意向が強く働く段階に多いと言えます。これは裏を返せばその段階に至っていない専属契約を結ぶ時点においては芸名に関する権利関係を双方に合意することは比較的容易であることを意味します。そこで移籍後の芸名の権利関係について契約書等に明記をすることにより実効性をもってタレント等の芸名の保護が可能となることから①の方法が良いと考えます。

さて、次回はちょっと変わった芸名に関するトラブルを紹介します。

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