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【信頼できる顧問とは 第三回】士業の経営戦略とは ランチェスター社労士 川端康浩

文:ランチェスター社労士 川端康浩

「信頼できる顧問の選び方」の第3回目です。

※過去の記事はこちら
【第一回】士業の事務所の選び方とは!
【第二回】税理士にも経営コンサルティングの知識が求められている!

今回は顧問先から選ばれるための士業にとっての経営戦略や付加価値について考えます。

 士業の競争激化

最初に、士業にとって一番大事なのは、「専門領域」の基本商品です。
その基本商品とは、税理士であれば税の申告業務、社労士であれば労働法令に関する業務です。
この専門領域の基本を外すことはできませんが、お客さんが求めるニーズはその先にあります。そこで考えたいのが士業にとっての経営戦略です。

世の中に商品や情報が溢れている現在、モノを買おうと思えば、いくらでも購入することができます。
もし、あなた自身が購入者だとしたらどうでしょうか。
何かの商品を購入しようというときに、市場に同じ商品があった場合、少しでも安いほうを買おうとするでしょう。
しかし、売り手側にとって、適正な売上や利益を得ることができるでしょうか。

これは士業にとっても同じです。
大量生産販売で効率化が図れる巨大資本のメーカーならいざしらず、士業のような人的サービス業が価格競争に巻き込まれると、適正な売上や利益の確保が大変難しくなります。
何十年も以前は、需要に対する士業の絶対数が少なく、競争になりにくい面がありました。しかし毎年毎年、資格試験が行われ、合格者の中から必ず一定数の開業者が現れます。時を経るに従い同業者が増えますので、競争は増すばかりです。
同質化した商品を販売し合う競争状態になると、決まって発生するのが「価格競争」ですが、有資格者同士での同質化の戦いから抜け出る方法が必要です。

 差別化に必要な「付加価値」の提供

競争により淘汰され、弱い事務所は無くなりますが、市場に残っている開業者は、競争市場で勝ち残った強い事務所です。その強い開業事務所との競争に加えて、昨今のインターネットの普及による、業務の電子化の波も益々進みます。国の方針や施策もからみ、ネットを通しての一元管理も進むでしょう。
たとえば会計業務がこれほどシステム化される時代が来るとは20年前ですら想像もつかなかったでしょう。
そこで、士業も他同業事務所との「差別化」「差異化」を図らなければなりません。この士業にとっての差別化こそ、顧客に提供する「付加価値」です。

 付加価値は「特化」から

では、この「付加価値」の本質は何になるのかを考えてみましょう。
付加価値として会計事務所の経営サポートで多いのが、経営計画策定など事業計画をサポートする業務です。しかし、この業務も、今では多くの会計事務所が行っているので強い差別化とはなりえない面があります。

 業種特化型のサポートもあります。特定の業界出身の税理士なので、その出身業界に強いため、より実践的なサポートができる強みや特徴があります。
そこで、会計事務所の付加価値として提供する「事業計画策定サポート」に、「○○業界専用」という1点集中の側面をプラスしてみます。
「○○業界専用の事業計画策定サポート」となることで、特徴の無い事業計画策定から、業界限定のサポートから生まれる業界に特化したものに変化します。このような特色が出せるようになって初めてサービスを受ける側が新たな「価値」を感じることができるのです。

一点集中による差別化戦略

一部の超大手の会計事務所は総合的なサポートを展開しなければ、全ての顧客を満足させるサポートを提供できないかもしれません。しかし、特に都心部で展開する中小会計事務所が大手会計事務所と同じようなサポートを行っても「質と量」の両方で勝てません。
そこで、何か勝てる領域に絞り込んで、その領域で強い特徴を打ち出して「付加価値」を上げる戦略が有効です。これをランチェスター経営戦略では、「弱者の一点集中主義」「個別撃破主義」と呼んでいます。

競争の激しい士業の業界で「経営戦略」は必要です。
顧問関与先に対して最大限のサポートを行って満足していただき、顧客先の「紹介」から確実に顧問先を増やす先生方はたくさんいます。しかし、それは「接近戦」のサービスを受けて、初めてその良さがわかるのであって、直接サービスを経験するまではわかりません。厳しい競争に勝ち抜くためには、士業も見込客づくりからの「経営戦略」を打ち立てて、実践することが必要です。さらに、顧問関与先になってからも、お客様にご満足いただく対応のための戦略を立てるなど、一般企業が行う「経営戦略」が必ず有益になります。
そこで次回以降では、ランチェスター経営戦略を軸に、士業にとっての経営戦略を実践的に紹介しましょう。

執筆者プロフィール

川端康浩(かわばた・やすひろ)

社会保険労務士 アサヒマネジメント/かわばた社会保険労務士事務所代表

人事コンサルの経験を活かしながら経営者と人事向けのランチェスター研修の活動も行う社会保険労務士。会社の強みを活かしたしくみづくりと実践支援が好評で、著書には『会社が得する!社員も納得!就業規則』(ソーテック社)、『一位づくりで会社も社員も変わる ランチェスター経営戦略シート活用のツボ』(セルバ出版)がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

著書

 

 

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