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【信頼できる顧問とは第一回】 士業の事務所の選び方とは! ランチェスター社労士 川端康浩

文:ランチェスター社労士 川端康浩

税理士事務所、社会保険労務士事務所、法律事務所など、さまざまな士業の事務所がありますが、顧問を依頼したいときには何を基準にすればよいでしょうか。
今回は士業の事務所の選び方を考えてみます。

経営について理解のある事務所かどうか

たとえば、税理士事務所と顧問契約を結ぶ場合、一般的には年間契約を結びます。
毎月の記帳業務や、年に1度の決算業務などを含めて通年で顧問契約を結び、そこから何年にも渡ってその関係が続きます。

一生の間に払うものとして、家やビルの購入の次に保険や税理士さんに支払う金額が多いとも言われますが、いったん税理士と顧問契約を結べば、何年も関係が続くことが多いものです。ですから、税理士事務所を選択するときは、きちんと会社の面倒を見てくれる事務所にお願いしたいものです。

では、信頼できる顧問とは、どういう顧問先でしょうか。
大きなポイントは、経営について良くわかっている事務所かどうかということです。

多くの会社経営では現状維持はなく、成長するか後退するかの2つに1つです。
士業は経営の根幹にかかわる仕事ですので、経営者は的確なアドバイスを士業に求めます。
たとえば、人の雇用において、社会保険労務士がパート形態での雇用や定年到達者の再雇用などをアドバイスすることによって、通常の正社員採用のときよりも、人件費や労働分配率の適正化による最終的な利益の確保ができます。

人的技術は会社の経営資源ですが、定年到達者は長年の勤務を通じて無形の人的技術を持っています。そのような経営資源を活用することにより、会社の製品や商品の品質向上につながれば、市場における会社の競争優位性に結実します。

会社の成長や発展に貢献できるかどうか

士業という仕事は、業務を通して携わる企業の成長や発展に寄与しなければなりません。
単なる記帳代行や手続き代行の業務では、そもそも代りはいくらでもいますし、内製化もできるものです。そこに本来の価値はあるのでしょうか。

一方で、士業は、経営者や経営幹部と接近して、顔を合わせて会社の経営状況を知ることができる職業です。そして業務を通じて会社の成長を支援するという価値を販売しています。それであれば、経営をよく理解している顧問先に依頼することは、ある意味、必要条件といえるでしょう。

では、経営についてよくわかっている事務所とは、どのような事務所でしょうか。
まず、士業の事務所のほとんどが士業の先生の個人事務所であり、法人化をしている事務所が少ないという現状があります。雇用している職員も1人から2人、多くても3人ぐらいで、その内訳も正社員ではなくパート従業員も多いのが実態です。
これは企業で言えば家庭内企業のような規模です。なかには先生1人だけの事務所も多くあります。

士業はその性格上、必ずしも法人化して、たくさん人を雇用すればよいというものではありません。ニッチな業界、業種や法務に特化して1人で素晴らしい実績を上げている先生もいます。
しかし、企業は「人、モノ、金」の規模を大きくする方向で、一度自らバランスを崩してさらなる成長をする過程が必要です。

事務所経営が自らできるかどうか

会計事務所の中には、基幹の会計事務所業を土台にして経理サポートやコンサルタント業、システムの開発など、『多角化』経営を実現して事業規模を拡大して連結して億単位で売り上げ、職員、社員を何十人も雇用している会計事務所もあります。
これはもう事務所というよりも、立派な企業でしょう。
そこまで行かなくても、職員を一定数雇用している士業の事務所は、多くの企業と同じように売り上げや人の悩みを抱えていて、関与先の企業の成長過程と同じように「会社経営」という実情に直面しています。

たとえば高いと言われる社会保険1つをとっても、人件費の総額から社会保険料負担をまかなわなければならず、また職員を正規雇用していれば年に1度の昇給や賃金のベースアップなど、人件費の上昇にも直面します。
そうなると、売り上げを上げるために、今年は顧問先を何件獲得すべきかなどの目標設定をはじめ、いわば一般の会社が作成するような「経営計画」が必要になります。

しかし、実際には「経営計画」のある士業事務所はとても少ないものです。
士業は経営者にとって「経営の良き相談相手」とならねばならないのに、普通の企業が行うような経営計画を立ててPDCAを行って進捗を図るなどの施策を行う事務所は数えるほどしかない事実は、考えてみれば不思議な業界ではないでしょうか。

士業が業務を通じて販売しているのは「専門性」です。
しかし、本当に提供すべきなのは、「会社の成長を支援する」という価値です。
会社の成長を販売している士業が、「経営」について理解が少ない、経営者と呼べる状態ではないのは、依頼する側が求める価値の欠如に繋がりかねません。

これはもちろん、士業の先生が会社経営をして多くの人を雇用しなければならない、という話しではありません。せっかく士業に顧問の依頼を行うのであれば、「専門性」についてはプロであることはもちろん、「経営についても良くわかっている」士業に依頼したほうが、より付加価値のアドバイスを的確に得られ、自社の成長に大きく寄与できるということなのです。

次回からは、今回ご紹介した以外のそのほかのポイントについてお話ししたいと思います。

執筆者プロフィール

川端康浩(かわばた・やすひろ)

社会保険労務士 アサヒマネジメント/かわばた社会保険労務士事務所代表

人事コンサルの経験を活かしながら経営者と人事向けのランチェスター研修の活動も行う社会保険労務士。会社の強みを活かしたしくみづくりと実践支援が好評で、著書には 『会社が得する!社員も納得!就業規則』(ソーテック社)、 『一位づくりで会社も社員も変わる ランチェスター経営戦略シート活用のツボ』(セルバ出版)がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

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