【司法書士 星野文仁様インタビュー】士業の顧問役も務める異色のスペシャリスト
司法書士・行政書士 星野文仁様 インタビュー 聞き手:みんなの顧問編集部・斎藤
企業法務コンサルティングで税理士事務所を支える
企業にはさまざまな課題が存在するが、10年、20年と長期に渡り存続してきた企業に共通して、経営者の世代交代という大きなテーマがある。
企業経営者の世代交代にあたっては、中小企業や中堅企業では特に人材不足の問題に直面することとなる。
「次の経営者をどうするべきか」
「後継者がいないので、雇用している従業員の今後をどうするべきか」
「事業譲渡ができるのか」
などと、特に創業者にとっては頭を悩ますことが多い。
企業や事業の世代交代の実際はどのようなものか、事業再編や組織再編などの企業法務コンサルティングに詳しい司法書士の星野文仁さんに、業界動向や事業承継や再編の現状などについて伺った。
星野文仁 Fumihito Hoshino
司法書士・行政書士
星野リーガル・ファーム代表
士業の顧問役も務める異色の司法書士
星野文仁さんは、東京都の銀座に事務所をかまえ、税理士や弁護士とタッグを組んでクライアントの問題を解決する司法書士・行政書士である。
特にM&Aや事業承継、相続などを得意としており、組織再編件数の実績は540件以上(2016年4月現在)で、内M&Aは250件以上と実務レベルで豊富な経験がある。
星野さんは、大手百貨店や生命保険会社の金融系部門を経て、1998年に開業。
司法書士事務所での勤務経験がまったくないところからいきなり開業して独自のサービスを編み出してきた異色の経歴を持つ。
星野さんは知り合いの税理士の先生が士業連合のオフィスを立ち上げるタイミングで一緒に開業したということもあり、ほかの士業の先生と組んで、企業の課題解決の実務にあたることが多い。
開業当時の日本では金融危機の最中で大手の証券会社が廃業、銀行も支店の統廃合などが相次いで起こった頃で、金融業界のみならず日本全体が揺れた時期だった。
それまでは銀行の不動産関連の手続き業務に大きく依存していた多くの司法書士にとっても先行きが不透明な頃。ルーチーンワークで稼げる枠組みが崩れつつあったが、従来の業務をあてにしていなかった星野さんは、ほかの同業者とはまったく異なる未来を見ていた。
実際、バブル崩壊以前にはなかった債務整理業務が司法書士や弁護士の仕事のひとつとして生まれることになり、また、星野さんはM&Aや事業再編、事業承継など、会社法を柱とした専門家としての道への歩を進めることとなる。
企業経営者にとっての身近な専門家とは?
現在、事業再編のスペシャリストとして活動する星野さんであるが、その契機には開業時に税理士と組んだことが大きい。
「中小企業の経営者にとって、唯一の身近な専門家が税理士の先生だといえます。中小企業の経営者にとっては、何か起こればまずは身近な税理士の先生に相談するものです」と星野さん。
一定の事業規模になれば、付き合いが発生するのは税理士や会計士がほとんど。税理士は業務特性もあり経営者と継続的に長期に渡る付き合いも生まれやすく、中小企業経営者の顧問となっている場合も多い。
日常的な付き合いがある税理士だからこそ、本当の専門家かどうかはともかく、身近な法律関連の専門家にまずは相談という流れは自然だといえる。
その結果、経営者は離婚や交通事故などのトラブルについて税理士に相談することが多く、アドバイスをもらったり、知り合いの弁護士や社労士などの専門家をさらに紹介してもらったりと、さまざまな協力や対応をしてもらうことも多い。
一方で、税理士は会社法の専門家ではないため、実際には弁護士や司法書士を経営者に紹介、依頼することになる。特に星野さんの場合は、実務の現場に詳しいことから弁護士やコンサルタントからの実務への協力依頼や紹介も多い。
経営者の引退時の対応方法はさまざま
日本全国の社長の平均年齢はすでに60歳を越え、社長の高齢化が進む。
今後、多くの経営者が引退の時期を迎え、否応なく事業承継や次の展開を考えなければならなくなるが、どのようなことが起こりえるのだろうか。
たとえば、家族が複数人、役員や経営陣になっていれば、人間関係には相応に配慮する必要がある。大手企業であっても一族が絡むお家騒動のニュースはよくあるが、株主の人間関係で会社や事業が崩壊する可能性は十分ありうるのだ。
そこで、創業者が父親で、子どもたちの人間関係が悪い場合などは、兄弟で会社を分割するという手段が出てくる。これは会社の業務の種類や地域などで会社を分割し、家族関係によるトラブルを回避する方法である。
また、子どもが長男と長女の場合は、事業と不動産とに分割して、長男に事業を渡して経営を継がせ、長女には不動産を残すという方法もある。
相続やM&A、廃業などのおおまかな選択肢はあっても、現実には企業や経営者の事情によってそれぞれ大きく対応が異なる。
したがって、星野さん自身のビジネスモデルも定型化せずに、コンサルティングを行いながら企業の現実に応じて対応している。
最近では全国の地方都市からも会社分割などの依頼などが増えてきており、これまでの経験やノウハウを活かしつつ、地域事情も踏まえながら、会社向けの基本的な説明会からはじめることも多い。
組織再編における実務のむずかしさ
組織再編では役所での手続きをクリアする必要があるが、これをいかにスムーズに行えるかどうかがとても大切となる。
星野さんの経験では、組織再編では先ほどの役員や債権者の関係のほかに、「許認可」の問題がとても重要だという。
星野さんはこの許認可に対応するために行政書士の資格も持つが、専門性の高い許認可の分野では、その道の専門家とさらにチームを組むこともあるという。
許認可のむずかしさは、手続きを見据えた許認可の扱い方にある。
たとえば、建設会社と不動産会社を合併させる場合は、建設会社が商売の柱であれば建設会社を残せばよい。
しかし、事情があって会社としては不動産会社を存続会社にしたい場合に、安易に建設会社を廃業してしまうと建設業の継続が困難になってしまう。
そこで、先に存続会社で建設業の許認可をとっておいてから、慎重に統廃合を行う必要が出てくる。
一般的に会社設立時にできるだけ多めに会社の目的を入れておくというやり方もあるが、場合によって企業合併時に問題になることや、許認可が絡むと「実際には行っていない事業」についての証明が出ないという事態もあるという。
企業合併ではこのような手続き上の問題を解決する、実務的なノウハウや経験が必要となるそうだ。
事業承継の今後
今後の組織再編や事業承継はどのようになっていくのだろうか。
組織再編には、上場やM&A(合併買収)、MBO(経営陣買収)、廃業などの選択肢があるが、事業承継はますますむずかしくなるそう。
また家族信託の制度を利用して事業承継を行う方法もある。
節税効果がないため、あまり普及していないというデメリットがあるが、家族信託の制度を使えばスムーズに資産承継ができるので検討したほうがよい場合もある。
今後は「(親族内の)事業承継の多くがM&Aにとってかわられるかもしれません」と星野さん。
そこで増えてきていた手段がM&Aである。
昔はM&Aというと売り手側からのアプローチが圧倒的に多かったが、いまは買い手側からのアプローチも多く、意欲的な企業経営者がゼロから新事業を始めるよりも、特色や技術力があれば既存の事業を買ったほうが効率的という判断があり、M&Aの需要が増えているのだという。
利益が出ている会社では廃業するにもコストがかかり、従業員がいれば雇用の問題もあるため、今後M&Aはさまざまな業種でもっと盛んになる、と星野さん。
事業再編の状況は非常に流動的だが、依頼者の要望に合わせ、柔軟かつ精力的に対応する姿勢がこれまでの実績そのものを表している。
司法書士 行政書士 星野リーガル・ファーム(http://www.shoshi.jp/)
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