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契約書、ソコが聞きたい!第2回 ビジネスに関わる契約書で重要なポイント

 

事業を営んでいると、取引に関して「契約書」が必要な場面があります。
ビジネスに関わる契約書には個人間の契約書とは異なる特徴があり、注意すべき点もあります。
今回は、契約書シリーズの第2回として、ビジネスに関わる契約書についてご説明します。

1.ビジネスに関わる契約書の例

まずはビジネスに関わる契約書としてどのようなものがあるのか、例を挙げて見てみましょう。

1-1.業務委託契約書

業務委託契約書は、ビジネスで非常に利用されることの多い契約書です。いわゆる「外注」をするときに必要となります。
たとえばデザインやホームページ、システムなどの作成、広報記事のライティングなどを外注するとき、受託者との間で業務委託契約書を作成します。
契約書なしで仕事を委託してしまう企業もありますが、そのようなことをすると、後に著作権や秘密保持などの点でトラブルになってしまうおそれが高まります。
何らかの外注をするならば、必ず事前に業務委託契約書を作成しましょう。

1-2.取引基本契約書

取引基本契約書は、継続的な取引をするときに必要となる契約書です。たとえば商品の売買や特定の作業等を継続的に発注する際、いちいち個別に詳細な内容を記載した長文の契約書を作成するのは面倒です。また継続的な取引の場合、一定期間両者を契約関係に拘束したいこともあります。
そこで、取引期間を明確にした基本となる契約書を作成しておき、個別の取引の際には簡単な確認書や発注書または簡易な契約書を作るだけで対応します。取引基本契約書は当事者間の基本的なルールを定めるもので、大変重要です。

1-3.秘密保持契約書

秘密保持契約書は、仕事を外注するときなどに、相手に企業秘密を守らせるための契約書です。
守るべき秘密の範囲、情報受領者の禁止事項、違反した場合のペナルティなどを明らかにして、情報提供者の秘密を守ります。
秘密保持契約書を締結しないと、重要な機密事項が漏えいされる危険が発生しますし、漏えいされても差し止めや損害賠償請求できなくなる可能性もあるので、必ず作成しましょう。

1-4.ライセンス契約書

著作権や商標権など、知的財産権を持っている場合にはそれを他者に貸すことができます。
ただしライセンスを与える際の条件を取り決めておかないと、大きなトラブルが発生します。どこまでどういった方法で権利を利用できるのか、貸している期間中、元の権利者は権利を利用することがあるのか、他のものにも同時に権利を貸すことがあるのか、契約期間や契約終了時の対応、違反した場合の対応など、取り決めておくべきことが多数あります。

1-5.株式譲渡契約書

M&Aを行うときなど、ビジネスシーンでは「株式譲渡」するケースも多々あります。その場合には必ず「株式譲渡契約書」を作成します。
これは、株式を譲渡する際の条件を定めた契約書です。株式の数量や売買代金、権利の移転時期や内容などを明確にします。M&Aのケースなどでは、元の経営者の処遇や会社の従業員の引継ぎなどの事項も一緒に定めることがよくあります。

1-6.売買契約書

商品取引をする場合、「売買契約書」を作成します。継続的な取引の場合には取引基本契約書を作成するので個別の売買契約書は簡易なものにするケースもありますが、不動産などの単発の取引であれば、売買契約書で、商品の内容、引き渡し時期、引き渡し方法、解除、損害賠償など、詳細な条件を取り決めておく必要があります。

1-7.抵当権設定契約書

ビジネスシーンで不動産を担保に借り入れをするときには、抵当権設定契約書を作成します。抵当権設定契約書では、対象の不動産の特定や借入金額、抵当権設定方法などを取り決める必要があります。

2.ビジネスに関わる契約書で重要なポイント

ビジネスに関わる契約書を作成するときには、以下のような点が重要です。

2-1.権利・義務の範囲

まずは契約によって当事者の権利義務の範囲を明確にすることが大切です。たとえば秘密保持契約書なら、何を「秘密」としてどのような行為を禁止するのか、漏えいが禁止されないケースはどのような場合か(除外規定)などを明らかにします。業務委託契約なら、何を委託するのか、どういった作業を目的とするのか、いつ完成したと言えるのかなどを書きます。

2-2.ペナルティの内容

契約内容に違反した場合のペナルティです。どのような場合にどういったペナルティがあるのかを明らかにしましょう。たとえば差し止め、解除、損害賠償請求などが考えられます。損害賠償について予定額や違約金を設定することも可能です。

2-3.権利移転時期、報酬支払時期

商品を納品したり貸したりする場合、権利の移転時期も問題となります。
また、報酬や代金を支払うべき時期も明らかにしておかないとトラブルになります。

2-4.契約の期限と途中解約

契約をするときには、期限を定めることが通常です。期限が終了したときに更新できるのか、また更新の方法についても定めましょう。途中解約の可否や方法についても決めておく必要があります。

2-5.反社会的勢力の排除

ビジネスの契約では、反社会的勢力の排除が非常に重要です。取引相手が反社会的勢力ではないことを保証させ、もしそうであれば契約を無条件に取り消せるようにしておきましょう。

2-6.紛争解決方法、管轄の裁判所

トラブルが発生したときにどのようにして解決するのかを取り決めます。裁判外の紛争解決機関(ADR)を利用したり、裁判所の管轄を定めたりすることが多いです。お互いに便宜な方法を指定しておきましょう。

 

以上がビジネスに関わる契約書の基本的な考え方です。安全に取引を行うため参考にしてみてください。

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解説者プロフィール

元弁護士 ライター 福谷陽子

京都大学法学部 在学中に司法試験に合格
勤務弁護士を経て独立、法律事務所を経営する
約10年の弁護士キャリアの後にライターに転身
現在は法律ジャンルを中心に、さまざまなメディアやサイトで積極的に執筆業を行っている

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