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相続手続きは自分でもできる?手続き内容と自分でやる目安もご紹介

相続手続きは自分でもできる?手続き内容と自分でやる目安もご紹介

遺産相続では、相続人が対応しなければならない事項が目白押しです。

  • 膨大な相続手続きを全部、自分でできるのだろうか?
  • どういう状況なら自分でできるのか、専門家に依頼しなければならないのはどういったケースなのか?

こういった疑問を持つ方も少なくありません。

今回は相続手続きを自分でできるのか、具体的な手続内容や自分でできる目安の判断基準をお伝えします。

相続人のお立場になった方はぜひ参考にしてみてください。

1.相続手続きで対応しなければならない事項

一般的な事案で相続手続きに対応するには、以下のようなことを行う必要があります。

1-1.遺言書の確認

まずは遺言書があるかどうかを確認しなければなりません。
法務局で自筆証書遺言が保管されていないか調べたり、公証役場で公正証書遺言を検索したりしましょう。自宅や貸金庫などに自筆証書遺言や秘密証書遺言が遺されているケースも多いので、探す必要もあります。

1-2.遺言書の検認

法務局や公証役場以外の場所で自筆証書遺言や秘密証書遺言が見つかったら、家庭裁判所へ申し立てて「検認」を受けなければなりません。
検認を受けずに遺言書を開封すると違法となり、「過料」という金銭的な制裁を受けるリスクも発生します。

1-3.相続放棄や限定承認の検討と申述

借金を相続したくないなどの事情があれば、相続放棄や限定承認を検討すべきです。
ただしこれらの手続きは「自分のために相続があったと知ってから3か月以内」に行わねばなりません。間に合わないと単純承認が成立して相続せざるを得なくなるので、期間制限にはくれぐれも遅れないように注意しましょう。

1-4.相続人調査

遺言書がない場合、誰が法定相続人になるのか調べなければなりません。そのために相続人調査を行う必要があります。具体的には被相続人の生まれてから死亡するまでのすべての戸籍謄本類などを取り寄せて親族関係を洗い出すのが基本です。

1-5.相続財産調査

遺産分割の前提として、どのような遺産があるのかも調べなければなりません。
金融機関で預貯金について調べたり、法務局で不動産の全部事項証明書を取得したりして財産状況を把握しましょう。

1-6.遺産分割協議と遺産分割協議書の作成

相続人と遺産内容が明らかになったら、相続人が全員参加して遺産分割協議を行いましょう。
合意ができたら内容を「遺産分割協議書」にまとめる必要もあります。

1-7.預貯金の解約(払い戻し)手続き

遺産分割の方法が決定したり遺言書で遺産の分け方が指定されていたりしたら、具体的な相続の手続きをしなければなりません。
たとえば預金があれば解約払い戻しを受ける必要があります。

1-8.株式の名義変更

株式が遺されていたら、相続人名義に変更するか売却する必要があります。相続人名義の証券口座を用意して株式の名義変更を行い、移管しましょう。

1-9.不動産の名義変更(相続登記)

不動産が遺された場合には、相続登記しなければなりません。法務局へ申請を出さねばならないので手間がかかります。
なお不動産の相続登記を専門家に依頼したい場合には司法書士を探す必要があります。

1-10.車の名義変更

車を引き継ぐ場合にも陸運局などで名義変更しなければなりません。廃車にするにもそれなりの手続きを経る必要があります。

1-11.相続税の申告や納税

相続の対象となる遺産が相続税の基礎控除額を超える場合には、相続税が発生します。
相続税の計算や申告、納税を行わねばなりません。
また相続税の申告納付期限は「相続が発生してから10か月」です。この期間をすぎると延滞税がかかってしまうので遅れないように注意しましょう。

1-12.遺留分侵害額請求への対応

不公平な遺言書が遺された場合や生前贈与が行われた場合などには、遺留分権利者(兄弟姉妹や甥姪以外の相続人)が遺留分侵害額請求できる可能性があります。
その場合、請求者と侵害者が話し合って遺留分侵害額の支払い方法を決めなければなりません。話し合いで解決できなければ調停や訴訟に対応する必要があります。

1-13.その他の手続き

上記のほか、被相続人が事業者の場合などには「準確定申告」という税金の申告手続きをしなければなりません。預貯金の使い込みが発覚したら不当利得返還請求を行うことができます。「遺言書が無効」と主張する場合には「遺言無効確認」の手続きを踏む必要があります。

以上のように、相続手続きで対応しなければならない事項は極めて膨大といえるでしょう。

2.相続手続きを自分でできる目安、判断基準

相続手続きではやらなければならない事項が多数ありますが、必ずしも専門家に依頼しなければならないわけではありません。
相続人が自分で対応しているケースもあります。以下ではどういった事案であれば相続人が自分で対応しやすいのか、目安となる判断基準をみていきましょう。

2-1.相続人の時間に余裕がある

まずは相続人に時間的な余裕があるかどうかが重要です。
相続手続きには時間を取られるので、仕事が激務で時間を取れない人には対応が困難となるためです。たとえば書類作成や取り寄せ、他の相続人との話し合いにも時間がかかります。
また法務局や金融機関の窓口は平日の昼間にしか空いていないので、そういった時間に時間を取れない方は自分で対応するのが難しくなるでしょう。

平日に休みがある方やまとまった休日を取りやすい環境にある方、仕事をしていないリタイヤ済みの方、自営業の方などは比較的自分で相続手続きをこなしやすいと考えられます。

「平日は毎日仕事で頻繁には休めない」方は専門家に依頼するのが得策です。

2-2.遺産の種類が少ない

遺産内容が単純な場合にも相続人が自分で対応しやすくなります。
たとえば遺産が預貯金だけであれば相続財産の難しい評価もしなくて良いですし、遺産分割協議で分けるのも比較的簡単です。
一方で、遺産に不動産が含まれている場合には専門家に依頼するようおすすめします。
不動産の場合、遺産分割の際の評価方法と相続税申告の際の計算方法が違いますし、預貯金のように割合的に分けることもできないからです。
不動産の相続登記にも手間がかかるので、物件が複数あると相続人に大きな負担となります。専門知識や経験のない相続人の方には対応が困難となるでしょう。

2-3.相続人が少ない、単純

相続人の人数や構成も相続手続きへ影響を及ぼします。
相続人数が少なかったり構成が単純な場合には相続手続きは比較的楽ですが、人数が増えたり構成が複雑になると相続手続きの難易度も上がります。

たとえば相続人が配偶者と子どもだけであれば、被相続人の戸籍謄本類を集めるのも簡単です。一方代襲相続人が含まれていたり兄弟姉妹が相続したりする場合にはより多くの戸籍謄本類が必要となり、遺産分割協議を開く手間や時間も大きくかかってくるでしょう。
遺産分割協議が成立するには「相続人が全員合意」しなければなりませんが、人数が増えると合意もしにくくなります。

相続人が3人以上いたり複雑な構成となっていたりする場合、相続人同士の仲が良くない場合などには専門家の助力を頼るようお勧めします。

2-4.スケジュールとおりに実行するのが得意

相続手続きの中には「期限」のあるものも多数あります。
相続放棄や限定承認、準確定申告や相続税の申告納付、遺留分侵害額請求などです。
こうした手続をスムーズに完了するには、きちんとスケジュールを立ててそのとおりに実行していく能力を求められます。
予定を立てて実行するのが得意な方は自分で相続手続きに対応しやすいといえますが、苦手な方には向いていません。期限をすぎると大きな不利益を受ける可能性もあるので、自信がないなら専門家に依頼すべきといえるでしょう。

2-5.忍耐力がある

相続手続きをやり遂げるには、忍耐力も要求されます。
まずは知識不足を補うためにいろいろと調べなければなりません。
法務局や金融機関、証券会社などに何度も連絡をしなければなりませんし、期限のある手続きは急ぐ必要があります。他の相続人との連絡や遺産分割協議も進めなければなりませんし、遺留分侵害額請求をされる可能性もあります。
忍耐強くすべての手続に対応し続けられる人でないと、最後まで完了するのが難しくなるでしょう。
最初は「自分でできる」と思っても、途中で挫折してしまう方が少なくありません。
忍耐強い性格でない方は、はじめから相続手続きを専門家に依頼するのが得策といえます。

2-6.専門的な知識を持っている

相続人に専門的な知識があるかどうかも判断基準になります。たとえば司法書士や行政書士、税理士、FPなどの資格を持っていて相続手続きに関する知識があれば、比較的楽に対応できるでしょう。不動産業の方なら相続登記についての知識があるので、何も知らない方よりは有利です。

こうした資格を持たない完全な素人の方の場合、自分で相続手続きをすべて行うのは現実的でないケースが多数となります。

2-7.地味な作業に慣れている、苦にならない

相続手続きでは、面倒な作業が多々あります。戸籍の収集がその代表ですし、不動産の登記についても必要書類がたくさんあり、面倒です。
地味な事務作業に慣れている方や苦にならない方なら、相続手続きを自分でしやすいでしょう。
一方で、事務作業が嫌いな方や不慣れな方は専門家に依頼するのが無難です。

3.相続を依頼できる専門家

相続手続きを依頼できる専門家は以下のような人です。

  • 行政書士…相続人調査や相続財産調査、遺産分割協議書の作成、車の名義変更などを依頼できます。ただしもめごとや不動産登記には対応できません。
  • 司法書士…相続人調査や相続財産調査、遺産分割協議書の作成、不動産の名義変更などを依頼できます。遺産の中に不動産が含まれているなら司法書士が大きな助けとなるでしょう。
  • 弁護士…相続人調査や相続財産調査、遺産分割協議や調停、審判の代理などさまざまな事項を依頼できます。相続登記と相続税申告以外はほぼなんでも依頼できると考えて良いでしょう。
  • 税理士…税務申告の専門家です。相続税が発生するなら税理士へ相談しましょう。

相続手続きに対応するとき、専門家によるサポートを受けると一気に楽になります。士業同士で連携している事務所に依頼すればワンストップで解決できておすすめです。相続人の立場になった方は今回の記事を参考にスムーズに相続手続きを完了しましょう。

この記事を書いた人:元弁護士 福谷陽子

京都大学法学部 在学中に司法試験に合格
勤務弁護士を経て独立、法律事務所を経営する
約10年の弁護士キャリアの後にライターに転身
現在は法律ジャンルを中心に、さまざまなメディアやサイトで積極的に執筆業を行っている

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