デジタル終活とは|相続前に親と話しておきたいデジタル遺品整理を解説
「デジタル終活、デジタル遺品という言葉を知った。どのような意味がある?」
「家族に知られたくない情報がスマホやパソコンに納められている。自分の死後はどうなるのだろう。」
「相続後は、親が所有していたパソコンなどはどう扱えばいいのか。」
日常生活に欠かせないスマホやパソコンは、親世代も多く活用しており、デジタル関連機器が以前よりも身近な存在となりました。スマホで株式取引を楽しんだり、電子マネーを管理したりなど、金融資産を操作している方も多いでしょう。
個人情報が詰まっているデジタル機器は、家族にも情報が漏洩しないように「ロック」している方も少なくありません。そこで、この記事では今こそ親世代と話しておきたい「デジタル終活」をテーマに、デジタル遺品整理について解説します。
目次
親と話しておきたいデジタル終活とは
デジタル終活とは、スマホやパソコンなどのデジタル機器を、終活の一環で整理することを意味します。そもそも終活とは、自分の死後の相続に備えて身の回りや金融資産などを整理したり、遺言書やエンディングノートを作成するなどの活動を意味する造語です。
近年では、年齢を重ねた方も多くスマホを利用しており、デジタル終活への関心は高齢者世代の中でも高まりつつあります。
デジタル遺品とは
デジタル終活の対象となる「デジタル遺品」とは、どのようなものでしょうか。主鬼スマホやパソコンをイメージされる方は多いでしょう。加えて、以下のようなものもデジタル遺品に該当します。
- 有名ショッピングサイトや動画サイトなどのオンラインサービス登録情報・利用履歴
- 〇〇payなどへの登録、利用履歴
- ネット・バンキングやネット証券の登録・取引
- SNSの登録情報や投稿内容
- LINEやメール、チャットアプリのアドレスや登録情報など
また、最近ではAmazonやGoogle上でクラウドサービスを活用し、写真データを保管していたり、音楽データを保管している方もいます。こうした保管情報も、デジタル遺産に該当します。
なぜ親とデジタル終活について話をするべき?
今までのイメージでは、高齢者も多い親世代は、スマホやパソコンをあまり使用していないイメージがありました。しかし、ガラケーと呼ばれるような種類の携帯電話はサービス終了を迎えており、スマホへの誘導が加速しています。親世代もスマホを使うことが多くなっており、デジタル遺品化する可能性が高まっているのです。
また、スマホは大変便利なため、金融資産の管理やSNSでの情報交換なども盛んとなっており株式取引やサブスクの利用を行う親世代も増加しており、家族で連携してデジタル終活を検討するべき時代を迎えています。
相続時に負担となりやすい?デジタル遺品のトラブルとは
デジタル遺品はパスワードでロックされているスマホやパソコンの中に含まれていることが多く、相続の開始後に親の遺したデジタル遺品の中身がわからず、苦戦するというトラブルが起きています。では、実際にどのようなトラブルがあるのでしょうか。具体例を紹介します。
端末パスワードが分からない
スマホやパソコンの中には、解約すべきアプリや相続財産として把握したいネット・バンキングなどの取引の情報が入っていることが多いですが、そもそも端末パスワードがわからないため、相続人が頭を抱えてしまうケースがあります。
また、被相続人が生前に交流していた方々に、葬儀などの連絡を伝えたくても、スマホ以外に連絡先を調べる方法がないケースもあります。
相続財産の調査が進まない
近年は大手都市銀行や地方銀行も、通帳レスを加速させており、親世代の中にもネット・バンキング化を進めている方が多くなっています。また、〇〇payなどの金融資産を有していたり、ビットコインの取引などをスマホで管理している可能性もあります。しかし、アプリのパスワードが分からなかったりすると、相続財産の特定が進まず、調査期間に時間を要することがあります。
負債が思わぬ形で発覚することがある
消費者金融などからの借入をスマホなどで管理していると、親が遺した負債に気が付かないことも考えられます。高額の負債は相続放棄や限定承認で対処することができます。
ただし、相続放棄や限定承認は、原則として「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に行う必要があります。(民法915条1項)
加えて、被相続人の財産を使ったり、処分したりすると単純承認をしたとみなされ、相続放棄などができなくなります。
返済記録が通帳や書面上で把握できれば負債の放置は防げますが、負債がわからないまま、プラスの財産だけを承継する手続き行ってしまうと、後から判明した高額の債務を相続放棄できない可能性が高いでしょう。
SNSを閉鎖できない
デジタル遺品の中には、SNSのアカウント類も含まれます。生前子が知らない間に親がSNSを楽しんでいることも多くなっていますが、死後も個人情報がネット上に開示されたままとなるおそれがあります。孫の顔を公開してしまっていたが消せない、子としては消して欲しい投稿が多いSNSを閉鎖できない、などのトラブルは実際に起きているのです。
よくわからない会費などが落ち続ける
スマホやパソコンなどでサブスクリプションなどに登録している場合、相続人が死後に解約手続きを進めないと、年会費や月会費、サービス料などが口座から落ち続けることがあります。止めたくても何の費用か特定できず、相続人が苦戦することも多くなっています。
デジタル終活の進め方|親子で話し合いを重ねよう
デジタル遺品となる可能性があるものは、すでに多くの高齢者も使用しています。万が一の時に備え、デジタル遺品となる可能性があるものは、親子が連携して「デジタル終活」として向き合っていくことがおすすめです。デジタル機器やネットの情報関連は子と一緒に管理していくことで、セキュリティや情報漏洩の対策ができるというメリットもあります。では、具体的にデジタル終活はどのように進めていくと良いでしょうか。
デジタル遺品の把握しよう
相続開始後にトラブルとなりやすいデジタル遺品は、生前の段階から親子で連携して、登録内容や取引内容などを「見える化」することがおすすめです。
子どもには知られたくない、というものがあるなら、親には遺言書やエンディングノートを活用して欲しいと伝えてみましょう。
財産目録やパスワード管理表を作っておこう
遺言書の作成には及ばなくても、自分の死後に相続人である子が相続財産の調査に困らないように、財産目録を作る要領で、ネット・バンキングやネット上の金融資産の管理先(ネット証券会社や保険会社など)をわかりやすく一覧票にしておくことも検討しましょう。
また、SNSやサブスクリプション、会員登録の抹消などに必要となるアカウント名やパスワードも、わかりやすく一覧票にすることがおすすめです。
データの管理・削除を進めておこう
スマホには思い出の写真や動画、自身の死後には子にとって大切な思い出につながることもあります。また、知人や友人とのメールは子に見られたくない、という場合は早めに削除しておくこともおすすめです。
データの管理には、クラウド上で行う方法もありますが、クラウド上の管理も死後に相続人による把握は難しくなるため、パスワード管理表に加えましょう。子が主導して、管理を手伝ってみてはいかがでしょうか。
写真や動画は、早めに印刷・DVD化するなどの方法で現物化することもおすすめです。
ネット証券などの金融資産管理に注意しよう
ネット・バンキングやネット証券の取引は、個人情報でもあるため、親子間で情報を共有しにくい部分です。特にネット証券などへのアクセスは、原則本人からのアクセスのみとされています。そこで、金融資産関係は、以下のような方法で生前から親子で連携することがおすすめです。
- 取引先の証券会社や取引銘柄は、相続開始後に速やかにわかるように財産目録などの方法で記載する
- 株式取引の有無などを子に知られたくない場合は、遺言書を作る
- 認知症などにより、親自身の金融資産の管理が危うくなる前に、子は親に連携の大切さを伝える
- 子は相続開始後のデジタル遺品調査の知識を蓄えておく
たとえば、上場株式等の口座が開設されている証券会社、信託銀行などの情報は、相続開始後に、ほふり(証券保管振替機構)に開示請求を行うことでも対策できます。こうした知識を身に付けておき、相続対策を行っていきましょう。
参考URL 証券保管振替機構 登録済加入者情報の開示請求
エンディングノート作成からデジタル終活を始めよう
親にデジタル終活を進めてもらうにあたっては、エンディングノートを作成することがおすすめです。エンディングノートは遺言書よりも敷居が低く、たったノート1冊で始めることができ、費用もかかりません。また、自身でデジタル関係の情報だけでなく、以下に挙げるものも記載できます。
- 死去後に処分してほしいもの
- 葬儀の連絡を伝えてほしい知人・友人の氏名や連絡先
- 万が一の急病に備えたかかりつけの病院名や、持病の薬名
- ペットの管理についての依頼 など
エンディングノートには遺言書のような法的拘束力はないですが、書式も自由で、気楽にいろんなことを書き遺せます。子どもに伝えておきたいことも含めて、まずは作成してみてはいかがでしょうか。
「まだまだ元気!」と話す親には、一緒に家族の財産を管理していく大切さが伝わるように、エンディングノートのお手伝いを申し出ることもおすすめです。
まとめ
今回の記事では、親子で話しておきたいデジタル終活やデジタル遺品について、詳しく解説しました。相続開始後には、小さなスマホやパソコンの中には、今や膨大な写真や動画、金融資産やサブスクリプションの登録情報が詰まっており、相続開始後には「ブラックボックス」になってしまうことがあります。
「親の相続財産調査が進まない!」という思わぬトラブルを防ぐためにも、ぜひ本記事をきっかけにデジタル遺品の整理について生前からご検討ください