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【社会保険労務士 大谷雄二様インタビュー】「人」の問題を解決する顧問

社会保険労務士 大谷雄二様 聞き手:みんなの顧問編集部(斎藤)

さまざまな「人」の観点から経営活動を支える

企業を拡大、成長させるには、多かれ少なかれマンパワーが必要となり、より多くの従業員が必要となる。

一方で、従業員が多くなればなるほど、各自の役割と人間関係は複雑化する。そして、単純な生産性の問題だけではなく、最悪の場合は、会社そのものが奈落の底を覗く結果になることもある。

このように、経営の問題を集約すると多くは「人」の問題に突き当たるが、企業と雇用の問題について、社会保険労務士の大谷雄二さんにご自身の経験もまじえてお話しを伺った。

大谷雄二 Otani Yuji

特定社会保険労務士
ソラーレ社会保険労務士法人代表

プロフィール

1969年東京生まれ。東海大学法学部卒。システム会社でシステム設計に従事後、2002年に社会保険労務士として開業し、2010年に特定社会保険労務士登録。ソラーレ社会保険労務士法人代表。

サラリーマンと事業承継の実体験

大谷雄二さんは、社会保険労務士事務所の代表だが、もともとは民間企業のサラリーマンだった。

大学卒業後の就職先はシステム会社。20代はネットワークやシステム設計関連の仕事をしていた。

サラリーマンとしての仕事は好きだったのだが、激務が続いたために体調を崩して退職。その後、派遣会社でシステムの仕事を続けながら資格の勉強をした。

大谷さんの実家は家族経営の社労士事務所だった。そのため父親の勧めで社労士の資格を取得して、父親の経営する社労士事務所に入所した。しかし、大谷さんにはもともとは家業を継ぐような意志はなかったので、結果としてたまたま家業を継ぐ形になったのだという。

社労士になって見えた企業のしくみ

大谷さんがシステム会社に勤めていたこともあり、開業してからしばらくはIT会社の顧客先が多かったが、いまではさまざまな職種のお客様が増えてきている。

社労士になった当初は特にシステム関係の会社との付き合いが多かったことから、サラリーマン時代よりもシステム関係の会社の状況などがよくわかるようになった。また、「二代目」としての苦労も出てくる。経営者として、スタッフとの人間関係の問題なども正面から向き合わざるをえなくなったが、良かれと思ったことがなかなか上手く行かないことも多く、経営者の悩みを沢山経験することとなる。

多くの企業が抱える課題

社労士事務所の主な仕事には、給与計算や入退社時の手続き、雇用助成金の申請、就業規則の作成、人事制度設計など。その他には未払い残業代の請求や解雇の問題などのトラブル相談もある。

これらの企業の課題について尋ねると、「結局は人間関係の問題になります」と大谷さん。

企業の問題やトラブルは、表層の原因からさらに深く見ていくと、つまるところ従業員間や使用者と雇用者の信頼関係の問題になる。だからこそ、職場で良好なコミュニケーションがとれる仕組みを作ることが大切になる。

また、経営者が抱える悩みには問題社員の扱いもある。成果が出ない社員や、昔はよかったが今は戦力にならない人、上司のいうことを聞かない人、遅刻欠勤の常習犯などの勤務態度が悪い人との仕事の大変さは経験がある読者も多いだろう。

大谷さんはそのような社員を抱える経営者に対して、最悪の場合でも「すぐに解雇という選択肢はしない」、「問題となっている社員と向き合って誠意を持って対話する」ことを必ずアドバイスする。

もちろん、人は簡単に変わるものではない。大谷さんも「学園ドラマのようにあっという間に変わるということはない」というが、心理学を応用した研修で前向きになった従業員も実際にいる。

また、会社と社員との間で誠意を持って話し合うことによって、最終的には退職することにつながったとしても、お互いに傷つかずに終わることも多いという。

「早期解決」のメリット

労使間での問題で多いのは、残業代未払いの処理や年棒制のケースなどだが、経営者が残業代についての理解不足の場合も多いので、事前に残業代の法律を理解しておくことは大切だ。

労使間のトラブルでは訴訟につながる場合もあるが、その際には先方の言い分が適正かどうかを迅速に計算して争うか、要求に応じるかどうかの判断を行う。訴訟のいかんにかかわらず、このようなトラブルでのポイントは「早期解決」。

そもそもネガティブな話なので、「ほかの従業員にもネガティブな空気が蔓延しないように、落とし所を見極めることが重要です」。

もし訴訟が長引けば、誰にとってもメリットはなくなる。紛争にも落とし所の相場はあるので、ダラダラとした訴訟を抱えながら経営に専念できるかも勘案して早期に解決することが望ましい。

中小企業の評価制度づくりのポイント

大谷さんの事務所では、人事制度の設計も行っている。

中小企業の場合、評価制度がなく、経営者の感覚によってなんとなく従業員を評価することが多い。

しかし、そのような経営者の主観に頼った評価では「従業員は何をがんばって仕事をすればいいのかがわからなくなります。従業員が自ら努力し、成長する評価制度をつくるべきです」。

そのような中小企業の評価制度のポイントは、経営者の頭の中にある評価基準を「可視化」すること。「経営者が従業員の何を評価しているのか」、「経営者の大切にしていることを見えるようにする」ということが大事です。

一方で、人事コンサルタントに頼っても上手くいかないケースも多いという。

コンサル会社主導の「◯◯すべき」という押し付けの人事制度は、企業の社風や経営者の価値観にマッチせず、経営者も従業員も納得しない評価制度になることも多い。そもそも中小企業が大企業にならって、形式的にはしっかりした人事制度をつくっても運用できないケースが多い。

大谷さんは、シンプルでわかりやすく、自分たちで運用できるしくみをつくらなければ意味がないという。

コミュニケーションは社長の仕事

大谷さんの事務所にはルーレットのような掃除の当番表がある。

ゴミ捨てや掃除機がけ、拭き掃除などの仕事は大谷さんも含めて日々全員参加のローテーション制。オフィスの移転を契機に大谷さんと幹部社員のお二人は「トイレ専任」に格上げ(?)になったが、そういった基本は大切だという。

大谷さんたちが実践している試みは多岐に渡る。

「会社が発展しそう、成長しそうな取り組みはなるべく自分たちで取り入れてやってみます」

大谷さんの事務所はいま、とても雰囲気が良い。しかし、そこにたどり着くまでには大変な苦悩も経験した。

机上の理論では身につかず、うまくいかなかったことへの反省もあって、いまは良いと思うことはなるべく実体験してお客様に反映するようにしたら、事務所自体も右肩上がりになった。

もちろん「変える」ということへの拒絶反応や抵抗が起こるのは当然。だからこそ、スタッフへの教育やコミュニケーションが必要になる。それを支えるのが「会社の発展とお客様の発展、それらの発展に必要な協調性です」。

そのためには仕事時間以外にもコミュニケーションの時間をとるために、月に1回は必ずオフィス内でコンパ(飲み会)を行う。あえて飲食店を利用せずに缶ビールやお惣菜を買ってきてオフィス内で行なうのは「何でも言いたいことが言い合える本音の話ができるし、経費削減にもつながるから」という。また、他にも1年を通じて、お花見、納涼会、運動会、忘年会、新年会、社員旅行、誕生日ランチ会など密なコミュニケーションをとっている。

もともと大谷さんはコミュニケーションをとるのは苦手だったそうだが、自らコミュニケーションをとる努力をし、職場で良好なコミュニケーションがとれる仕組みを取り入れた結果、事務所自体がよくなった。士業やコンサルタントの中には、アドバイスの内容を自分たちではほとんど体験していないケースも多い。だからこそ、大谷さんたちのひとつひとつの試みや実体験を通じたアドバイスやサービス提供が、顧客先の成長に結びつくようになった。

取材時に伺った事務所は、ちょうどマイナンバー対応と事業拡大のために移転したばかり。より良く成長したいという気概は事務所の雰囲気からも強く感じられた。