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遺言書の作成は専門家に依頼すべき?メリット・デメリットや依頼すべき状況を解説

遺言書の作成は専門家に依頼すべき?メリット・デメリットや依頼すべき状況を解説

遺言書の作成は弁護士や司法書士などの専門家へ依頼すると、自分で作成するよりもスムーズですし、無効になりにくいなどのメリットがあります。

ただ「費用がかかるのでは?」「弁護士はなんとなくハードルが高い」などと感じる方も多いでしょう。

今回は遺言書の作成を専門家へ依頼するメリットやデメリット、依頼すべき状況についてお伝えします。

遺言書を作成しようとしている方、専門家へ依頼しようか迷われている方はぜひ参考にしてみてください。

 

1.遺言書の作成を専門家に依頼するとしてもらえること

そもそも遺言書の作成を専門家に依頼したらどういったサポートを受けられるのでしょうか?
以下では専門家にしてもらえることを簡単に確認しましょう。

  • 遺言内容についてのアドバイス
  • 遺言書の作成方法についてのアドバイス
  • 遺言書の種類や選び方についてのアドバイス
  • 遺言書の原案作成
  • 遺言書の作成手続きをサポート(公証役場との連絡など)
  • 遺言執行者への就任

上記のようなサポートを受けられるので、専門家に依頼すると自分ひとりで対応するより状況に適した内容の遺言書をスムーズに作成できるのは確かでしょう。

2.遺言書の作成を専門家に依頼するメリット

遺言書の作成を専門家に依頼すると、以下のようなメリットがあります。

2-1.遺言書が無効になりにくい

せっかく遺言書を作成しても、無効になっては意味がありません。しかし自分で作成すると、要式不備となって無効になるケースが多々あります。特に自筆証書遺言を作成すると、法律の規定に違反して無効になるケースが多いので間違えないように注意しなければなりません。

専門家へ依頼したら、自筆証書遺言でも無効になるリスクは大きく低減されます。完成した遺言書のチェックを依頼することも可能です。

2-2.遺言書を預けられる

せっかく遺言書を作成しても、相続人に発見されなければ意味がありません。
しかし自分で保管していると、紛失する可能性もありますし発見した相続人が破棄したり内容を書き換えたりするおそれもあります。

遺言書を専門家に預けておけば、こういった危険はほとんどなくなります。遺言者がお亡くなりになったときにより確実に遺言内容を実現できる可能性が高まるメリットがあるでしょう。

2-3.遺言内容を相談できる

自分ひとりでは遺言内容を決められない方も多数おられます。
自己判断で遺言内容を決めてしまった場合、遺留分を侵害するなどしてトラブルの種になってしまうケースも少なくありません。

専門家へ遺言書の作成を依頼する場合、遺言内容の相談にも乗ってもらえます。
遺産内容や相続人の構成、遺言者の希望に応じて総合的に「ベストな遺言内容」を提案してもらえるので、遺言者にとっては大きなメリットとなるでしょう。

2-4.遺言書の種類についてアドバイスしてもらえる

遺言書には、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」、「秘密証書遺言」という3種類があります。それぞれ作成方法やメリット・デメリットも異なり、状況に応じた適切なものを選択しなければなりません。ただ、遺言者1人ではどの遺言書が一番良いのか判断するのは難しいでしょう。

弁護士などの専門家に相談すると、遺言内容についてもアドバイスを受けられます。
公証役場などでは遺言内容についてまでは相談できないので、それと比べても専門家に遺言内容を相談できるのは大きなメリットとなるでしょう。

2-5.手間がかからない

遺言書を作成する際には、大変な手間がかかります。
自筆証書遺言の場合には全文を自筆で書かねばなりません。公正証書遺言の場合には公証役場へ申し込んで遺言内容を伝え、証人を2人用意して公証役場へ行く必要があります。

弁護士などの専門家へ依頼すると、ほとんどの手続きを代行してもらえるので手間がかかりません。公証役場へも同行してもらえます。

2-6.相続人や受遺者をサポートしてもらえる

遺言書で指定された遺産分割を実現するには、相続人や受遺者が自分で対応しなければなりません。慣れない手続きに手間取ってしまう方もおられます。
専門家へあらかじめお願いしておけば、相続人や受遺者もサポートしてもらえます。
遺された相続人らにかかる負担も小さくできるメリットがあるといえるでしょう。

2-7.遺言執行者になってもらえる

遺言内容を実現する際には「遺言執行者」がいるとスムーズです。
遺言執行者とは、遺言内容を実行する職務を行う人をいいます。たとえば不動産の名義変更や預貯金の払い戻しなどを行います。子どもの認知や相続人廃除、取り消しなどは遺言執行者でなければできません。

専門家に遺言執行者への就任を依頼しておけば、いざ相続が起こったときにスムーズに遺言内容を実現できるメリットがあります。

2-8.トラブル対応も依頼できる

遺言書を作成しても、一部の相続人が「無効」「偽物」だと言い出してトラブルになる事例が多々あります。相続人同士で話し合って解決できない場合、訴訟になる可能性もあります。

また遺言書で遺留分を侵害した場合、侵害された権利者から「遺留分侵害額請求」が行われるケースも少なくありません。

弁護士に遺言書作成を依頼しておけば、遺言書を巡るトラブルが発生したときにも適切に対応できます。
トラブルを極力起こさないようにするだけではなく、実際にトラブルが起こったときにも対応を依頼できるのは大きなメリットとなるでしょう。

3.遺言書の作成を専門家に依頼するデメリット

遺言書の作成を専門家へ依頼すると、どのようなデメリットがあるのでしょうか?

3-1.費用がかかる

専門家へ遺言書作成を依頼すると、費用がかかります。
具体的な金額は、依頼する専門家の種類や事務所によっても異なります。
相場でいうと、以下の通りです。

  • 行政書士…5万円~10万円程度
  • 司法書士…5万円~15万円程度
  • 弁護士…10万円~30万円程度(遺言内容や遺産額によって費用が上がる事務所もあります)

上記はあくまで相場であり、必ずしもあてはまる事務所ばかりではありません。

いずれにせよ、数万円以上の費用が発生する点は専門家へ依頼するデメリットといえるでしょう。

とはいえ「無効になりにくい」「紛争が起こりにくい内容に仕上げてくれる」「遺言執行者への就任も依頼できる」などたくさんのメリットもあります。基本的には費用をあまり重視しすぎず、遺言書作成は専門家へ依頼するのが得策といえるでしょう。

3-2.良い専門家にあたるとは限らない

専門家へ遺言書作成を依頼する際の注意点として「良い専門家に当たるとは限らない」問題があります。

ひと言で専門家といっても、いろいろな人がいます。弁護士と司法書士、行政書士といった職種によっても対応範囲が異なりますし、人によっても相性などが異なってくるでしょう。

  • 依頼した専門家が遺言書作成を得意としていない
  • 依頼した専門家とウマガ合わずストレスを感じる
  • 納得できるアドバイスを受けられなかった
  • トラブルが発生したら「これ以上対応できないから弁護士を探してほしい」と言われてしまった

こういった失敗例もあるので、専門家を選ぶ際には慎重に対応しなければなりません。

4.遺言書の作成を専門家に依頼すべきケース

以下のような状況であれば、専門家へ遺言書作成を依頼するのが良いでしょう。

  • 遺言内容をどのようにすればよいか迷っている
  • 遺留分トラブルを防止したい
  • 過去に離婚歴があり、父や母の異なる子どもたちがいる
  • 相続人らが疎遠で連絡を取りづらそうである
  • 相続人らの仲が悪い
  • どの種類の遺言書を利用すれば良いかわからない
  • 遺言書の内容を確実に実現したい

5.遺言書の作成を依頼できる専門家の種類や選び方

遺言書の作成を依頼できる専門家には、主に「行政書士」「司法書士」「弁護士」があります。
以下ではどの専門家へ依頼すれば良いのかみてみましょう。

5-1.行政書士

行政書士は、もともと行政文書の作成に対応する専門家です。たとえば、官公庁に提出する書面や資料を用意して、代理で提出なども行います。
最近では不倫の慰謝料請求書や時効援用通知書などの内容証明郵便、遺言書の原案作成を取り扱う行政書士も多数います。
費用も比較的リーズナブルなので、なるべくコストをかけたくない方は行政書士に遺言書作成を依頼するのも一つの選択肢となるでしょう。

ただし行政書士はトラブル対応ができません。
将来「遺言書が無効」といわれて争われた場合や遺留分侵害額請求が起こった場合などには、あらためて弁護士に依頼する必要があります。それであれば、はじめから弁護士に依頼する方が得策です。

相続人が1人で揉め事が起こりづらい場合などには行政書士に依頼すると良いでしょう。

5-2.司法書士

司法書士は、もともと登記に携わる専門家です。
遺産に不動産が含まれている場合には司法書士も遺言書作成に対応できます。
すると、将来相続が発生したときに司法書士がスムーズに不動産登記(名義変更)を行ってくれるメリットもあるでしょう。

ただ、すべての司法書士が遺言書作成などの相続業務を取り扱っているわけではありません。また司法書士もトラブル対応はできません。遺言書が無効などと主張されて争われた場合、別途弁護士へ依頼する必要があります。

相続関係が複雑な場合や相続人の人間関係がよくない場合、はじめから弁護士に依頼するのが得策といえるでしょう。

5-3.弁護士

弁護士は法律全般の専門家です。多くの士業の中で、唯一代理人となってトラブル解決に当たれます。
調停や審判、訴訟の代理人などは弁護士しかつとめられません。
一部の相続人から「遺言書が無効」と言われたり遺留分侵害額請求が行われたりしたときに対応できるのは弁護士のみということです。
その分、他の専門家よりも費用は高くなりやすい傾向があります。

また弁護士は普段から紛争案件を多く取り扱っているので、「どういった内容にすれば紛争が起こりにくいのか」予測して対応できます。

トラブルを生じさせにくい遺言所を作成してもらえるのは、弁護士に依頼する大きなメリットといえるでしょう。

6.良い専門家を選ぶためのポイント

遺言書の作成を依頼するときには、良い専門家を選ぶべきです。専門家選びに失敗してしまうと、遺言書がトラブルの種になってしまうおそれもあります。
遺言書作成の専門家を探すときには「相続に熱心に取り組んでいて実績の高い事務所」を選びましょう。

専門家との相性も重要です。相談をしてみて「話しやすい」「信頼できる」と感じられる人を選ぶと失敗しにくくなります。相続に力を入れている事務所の多くが無料相談を行っているので、まずは一度利用してみてください。

この記事を書いた人:元弁護士 福谷陽子

京都大学法学部 在学中に司法試験に合格
勤務弁護士を経て独立、法律事務所を経営する
約10年の弁護士キャリアの後にライターに転身
現在は法律ジャンルを中心に、さまざまなメディアやサイトで積極的に執筆業を行っている

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