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銀行に相続相談すべき人・すべきでない人の特徴(銀行の遺産承継サービスが向いている人・向かない人)

銀行

「【銀行に相続の相談をするメリット・デメリット】有資格の相続専門家に相談する場合との比較」では、銀行に相続相談をする際のメリット・デメリットや、司法書士などの専門家との違いについてご紹介しました。

今回はその内容をさらに深掘りし、どのような人が銀行への相続相談に向いていて、どのような人がそうでないのか、具体的な特徴を解説していきます。

1. 銀行への相続相談が向いている「最適」なのはどんな人?

銀行の相続関連サービスは、特に「時間や手間をかけたくない」「手続きの窓口を一本化したい」と考える人にとって、非常に魅力的な選択肢となります。

「時間と手間」を最優先で買いたい人: 複数の銀行口座や証券口座の解約を自分で回る限界

相続が発生すると、故人名義の銀行口座の解約・払戻し、証券口座の名義変更など、複数の金融機関で手続きが必要になります。金融機関ごとに必要書類や手続きの進め方が異なり、平日昼間の窓口対応が求められることも多いため、相続人にとっては大きな負担になりがちです。

この負担を軽減する手段として、信託銀行などの金融機関が提供する「遺産承継(遺産整理)サービス」を利用する方法があります。サービス内容は金融機関によって異なるものの、相続人調査や相続財産調査、預貯金・有価証券の換金や名義変更等を一定範囲でまとめてサポートしてもらえる場合があり、複数の口座・金融商品が分散しているケースでは、手続きの手間を減らせる可能性があります。

もっとも、銀行が相続実務をすべて自ら行うとは限らず、提携する司法書士・税理士等の専門家へ案件をつなぐ形で進むこともあります。

「家族の信頼」をブランドで担保したい人: 親族が「銀行が言うなら」と納得しやすい心理的効果

相続手続きは、財産に関わるデリケートな問題であり、親族間での意見の対立を招くことも少なくありません。誰が手続きの主導権を握るかで、不公平感や不信感が生まれることもあります。

このような状況で、社会的に信用の高い「銀行」という第三者が間に入ることで、手続きの透明性や公平性が増し、親族が安心して任せやすくなるという心理的な効果が期待できます。

「〇〇さんが勝手に進めている」ではなく、「銀行の専門家が進めている」という形にすることで、無用なトラブルを避け、円滑なコミュニケーションを促す助けとなるでしょう。

資産を特定の銀行に集約しており、今後の運用も任せたい人

故人の資産の大部分が特定の銀行に集中している場合や、相続人がその銀行と既に取引がある場合は、相談がスムーズに進むことが多いです。銀行側も顧客の資産状況を把握しやすいため、より的確なアドバイスが期待できます。

また、相続した財産を今後どのように運用していくかについても相談したいと考えている人にとって、銀行は心強いパートナーになります。銀行は融資だけでなく、資産運用に関するコンサルティングにも力を入れていることが多いため、相続手続きからその後の資産活用まで、一貫したサポートを受けることが可能です。FP(ファイナンシャルプランナー)と連携している銀行もあり、長期的な視点での資産形成を考える上で有益な提案を受けられる可能性があります。

2. 逆に、銀行への相談が向いていない「ミスマッチ」になる人の特徴

一方で、銀行のサービスが必ずしも全てのケースで最適とは限りません。コストを抑えたい場合や、専門的な対応が必要な場合には、ミスマッチとなる可能性があります。

「コストパフォーマンス」を重視する人: 実務を担う士業へ直接依頼するメリットとの比較

銀行の遺産承継サービスは、手続きを代行してくれる便利なものですが、その分、手数料が発生します。この手数料には、銀行のコーディネート料に加え、実際に登記手続きを行う司法書士や、税務申告を行う税理士などの専門家への報酬が含まれていることが一般的です。

実は、銀行は税務相談や法律相談を直接行うことが法律で制限されています。そのため、銀行が作成する提案書にも「実行の際には税理士等の専門家に確認すべき」といった注意書きが記載されていることがほとんどです。つまり、銀行に依頼しても、最終的な専門業務は外部の士業が行うことになります。

コストを最優先に考えるのであれば、必要な手続きに応じて、司法書士や税理士に直接依頼する方が、中間マージンがかからず費用を抑えられる可能性があります。

遺産分割に「調整」が必要な人: 銀行は「決まった後の事務」は得意だが「合意形成」はできない

相続人同士で遺産の分け方について意見がまとまらず、揉めてしまっている、あるいはその可能性がある場合、銀行に相談するのは適切ではないでしょう。銀行は、あくまで中立的な立場で事務手続きを進めるのが役割であり、相続人間の交渉代理や法的な紛争解決を行うことはできません。

遺産分割で争いがある場合、代理人として交渉したり、家庭裁判所での調停や審判手続きを進めたりできるのは、法律で弁護士に限られています。もし、相続人同士での話し合い(遺産分割協議)が難航しそうな場合は、最初から弁護士に相談すべきです。

不動産の評価減や特例利用で「攻めの節税」をしたい人

相続財産に不動産や非上場株式などが含まれ、専門的な評価や税金の特例を利用して積極的に相続税を抑えたい(節税したい)と考えている場合、銀行のサービスだけでは不十分なことが多いでしょう。

銀行は、税理士法との兼ね合いから、具体的な税務相談や踏み込んだ節税提案を行うことができません。相続税の計算は非常に複雑で、特に以下のようなケースでは高度な専門知識が求められるため、相続に詳しい税理士に相談することをおすすめします。

  • 不動産の評価
    土地の形状や利用状況によって評価額が大きく変わることがあり、専門家でなければ適切な評価は難しいでしょう。相続税に強い税理士、または不動産鑑定士と連携している税理士に相談するのが最適です。
  • 事業承継税制:
    非上場株式や個人事業の資産を後継者に引き継ぐ際に、納税が猶予・免除される特例ですが、要件が非常に複雑です。事業承継に精通した税理士や中小企業診断士と連携している税理士への相談を検討しましょう。
  • その他の特例
    小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減など、様々な特例を最大限に活用するには専門的な知識が必要です。相続税専門の税理士に相談することで、適用可能な特例を漏れなく活用できます。

3. 【状況別】銀行・士業・併用、どれを選ぶべきかの判断基準

では、具体的に自分の状況ではどこに相談するのが良いのでしょうか。判断の基準となる3つのポイントを見ていきましょう。

預貯金メインか、不動産メインか

相続財産が預貯金中心か不動産中心かによって、相談すべき専門家が変わってきます。財産構成を確認してから、適切な相談先を選びましょう。

  • 預貯金がメインの場合
    相続財産の多くを預貯金が占めている場合、銀行への相談が比較的向いています。金融資産の手続きは銀行の得意分野であり、窓口を一本化するメリットを享受しやすいでしょう。
  • 不動産がメインの場合
    相続財産のメインが不動産である場合には、司法書士への相談が基本です。相続した不動産の名義変更(相続登記)は司法書士の専門業務です。

また、不動産の価値を正確に知りたい場合は不動産鑑定士、土地の境界を確定させる必要がある場合は土地家屋調査士など、不動産に強い専門家との連携が必要になります。

2024年4月からは相続登記が義務化されており、不動産がある場合は専門家への相談がより重要になっています。

相続税申告が必要か、基礎控除内か

相続税がかかるかどうかは、大きな判断基準です。遺産の総額が基礎控除額「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」を超える場合、相続税の申告が必要です。

遺産の総額が基礎控除内に収まる場合、銀行や司法書士、行政書士など、幅広い選択肢が考えられます。この場合、預貯金の手続きが中心なら銀行、不動産の名義変更が必要なら司法書士、書類作成のサポートが必要なら行政書士というように、財産の内容や必要な手続きに応じて相談先を選ぶとよいでしょう。

一方で、基礎控除額を超える遺産がある場合は、税理士への相談を強くおすすめします。相続税の申告は税理士にしか依頼できませんし、特に相続税を専門に扱っている税理士に依頼することで、適切な申告と効果的な節税が期待できます。

申告が必要かどうかわからない段階でも、早めに税理士に相談し、財産の概算を伝えることで要否を判断してもらうのがよいでしょう。

相続人の数と関係性の深さ(揉める火種があるか)

相続をスムーズに進めるためには、相続人の数や関係性を冷静に見極め、状況に応じた相談先を選ぶことが大切です。

相続人が少なく関係も良好であれば、相続人自身で手続きを進めることも十分可能です。ただし、手続きの負担を減らしたい場合は、銀行や司法書士に依頼すると効率的に進められます。

一方で、相続人が多い場合や、関係が複雑で揉める可能性が少しでもある場合は、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。

弁護士は法的な代理人として交渉や調停・審判に対応できる唯一の専門家であり、問題が表面化する前に相談することで、紛争を未然に防ぎ、円満な解決へと導くサポートを受けられます。

4. 銀行と専門家を「併用」して賢く手続きを進めるパターン

「銀行の利便性」と「専門家の知見」を両方活かす「併用」という選択肢も有効です。役割分担を明確にすることで、効率的かつ質の高い相続手続きを実現できます。

銀行: 煩雑な「預貯金・有価証券の解約」と「名義変更」の窓口として活用

銀行を「相続手続きの総合窓口」と位置づけ、最も手間のかかる各金融機関での預貯金・有価証券の解約や名義変更といった事務手続きを一括で任せます。

これにより、相続人は煩雑な作業から解放され、手続き全体の見通しを立てやすくなります。

専門家(税理士・司法書士): 「相続税申告」や「不動産登記」を個別・直接依頼して精度を高める

一方で、高度な専門知識が求められる業務は、それぞれの分野のプロフェッショナルに直接依頼します。

  • 相続税申告
    相続税に強い税理士に直接依頼し、節税の可能性を最大限に探ります。
  • 不動産登記
    司法書士に直接依頼し、確実な名義変更を行います。

このように分業することで、銀行の提案を鵜呑みにせず、専門家の視点で内容を精査しながら、より正確で有利な手続きを進めることが可能になります。

※併用する場合の注意点(情報の共有とコストの重複について)

銀行と専門家を併用する際には、注意すべき点もあります。特に次のような点に気を付けましょう。

  • 情報の共有
    銀行と各専門家が別々に動くと、情報が分断され、手続きに漏れや間違いが生じるリスクがあります。誰が全体の司令塔になるのかを明確にし、関係者間での密な情報共有を心がけることが重要です。
  • コストの重複
    銀行のサービス手数料と、各専門家への報酬がそれぞれ発生するため、トータルのコストは割高になる可能性があります。事前にそれぞれの見積もりを取り、全体の費用感を把握した上で進めるようにしましょう。

5. 迷った時の最初の第一歩:後悔しないためのアクションプラン

「どこに相談すればいいか、まだ決められない」という方は、まず以下の2つのアクションから始めてみましょう。

まずは「財産目録」のラフを作ってみる

相続手続きの第一歩は、故人がどのような財産をどれくらい遺したのかを把握することです。預貯金、不動産、有価証券、生命保険、借金など、プラスの財産もマイナスの財産もすべてリストアップした「財産目録」の簡単なものを作成してみましょう。

この目録があるだけで、相続税申告が必要かどうかの判断がつきやすくなり、専門家に相談する際にも話がスムーズに進みます。エンディングノートなどがあれば、それを参考にするのもよいでしょう。

銀行の無料相談で「自分のケースでの見積もり」を概算で出してもらう

多くの金融機関では、相続に関する無料相談会を実施しています。作成した財産目録のラフを持参して、自分のケースではどのようなサポートが受けられ、費用がどれくらいかかるのか、概算の見積もりを出してもらいましょう。

これにより、銀行に依頼する場合の具体的なイメージが湧き、他の選択肢と比較する際の基準になります。

銀行だけでなく、自治体や法テラス、税務署などでも無料相談窓口が設けられているので、複数の窓口で話を聞いてみることをおすすめします。

まとめ

相続の相談先を選ぶ上で最も大切なのは、あなた自身が何を優先したいのかを明確にすることです。以下の表を参考に、ご自身の状況に合った相談先を選びましょう。

優先したいこと おすすめの相談先 理由
手間を最小限にしたい 銀行 窓口一本で各種手続きを代行してくれる
コストを抑えたい 専門家へ直接依頼 銀行の手数料を省き、必要な業務だけ依頼できる
専門性を重視したい
(節税・紛争解決など)
専門家へ直接依頼 高度な知識で最適な解決策を提案してもらえる

この優先順位を整理した上で相談先を選ぶことで、後悔のない相続手続きが実現できます。

なお、より詳しい銀行と専門家の比較や、それぞれのメリット・デメリットについては、「【銀行に相続の相談をするメリット・デメリット】有資格の相続専門家に相談する場合との比較」でも解説していますので、あわせてご参照ください。

相続は、いつか誰もが経験する可能性のある身近な問題です。いざという時に慌てないためにも、司法書士、税理士、弁護士といった専門家が行っている無料相談を早めに利用し、正しい知識を得ておきましょう。それが、あなたと家族の円満な相続への第一歩となります。

この記事を書いた人:弁護士 中澤泉

2015年司法試験合格。2017年弁護士登録。弁護士事務所での実務経験を積んだ後、メーカにてインハウス弁護士として勤務。2023年からは弁護士業の傍ら法律ライターとしても活動を開始。弁護士としての経験をもとに、多様な法律分野で執筆を行う。

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