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知的財産、ソコが聞きたい! 第5回 特許編「特許とは何か」

 

今回からは、「特許」について解説します。
これまで、商標で保護されるのは「ブランド」であることを説明してきました。この商標に対して、特許で保護されるのは「アイデア」です。
商標とは異なり、特許では新規性や誰もが思いつくようなものでないことが要求されます。

発明・商品は出願前に公表や販売ができない

特許は商標と同じ知的財産権で、特許庁に対し手続きを取り、認可を受けることではじめて権利が発生します。
特許は商標と同様、最初に権利を取得することがとても大事です。さらに特許では、出願前にその発明を発表、あるいはその発明を使った製品を販売することができません。
出願前に発表や販売をしてしまうと、原則として特許として認められなくなるので、注意が必要です。

特許の定義

特許の定義をあらためて説明しましょう。
特許法第1条は、特許を次のように定めています。

「この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする」

ここでの「発明」とは、目に見えない技術上のアイデアのことです。
ここは大事なポイントですので、もう少し詳しく説明しましょう。

発明の定義

特許法第2条では、発明を次のように定めています。

「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」

この文言から外れたものは、特許法における発明には該当しません。
この「自然法則」と「技術的思想の創作」について、それぞれ見ていきましょう。

発明の定義の「自然法則」

「自然法則」とは、自然界で見られる化学的・物理的法則のことをいいます。
人為的な取り決めや経済学上の法則、人間の精神活動などは、自然法則とはなりません。
たとえば、「IT技術」は自然法則を利用した技術です。しかし、哲学や経済理論などは、自然法則ではありません。また、永久機関は自然法則(エネルギー保存の法則)に反するものです。

発明の定義における「技術的思想の創作」

次に「技術的思想の創作」について説明します。
「技術的思想」とは、実際に利用でき、他人に具体的・客観的に示すことができるものをいいます。
現在の技術水準では実現不可能であるものや、未完成なものは、これに該当しません。
創作は、新たなものを作り出すことです。自然界にあるものを見つけるだけの発見や、誰もが知っているものは創作とはなりません。
さらに特許では、「高度なもの」である必要があります。これは、実用新案と区別するために作られた要件です。実用新案については、次回、詳しく説明しましょう。

発明の3分類

特許法では発明を、「物の発明」「方法の発明」「物を生産する発明」の3つに分類しています。
この3つの分類は、次のように特許で保護される範囲がそれぞれ異なります。

分類1「物の発明」

「物の発明」とは、特定の「物」を対象とした発明です。
たとえば、有機化合物、携帯電話、装置などの発明がこれに該当します。
プログラムの発明も「物の発明」に含まれています。

分類2「方法の発明」

「方法の発明」とは、生産物を伴わない単純な発明です。
たとえば、測量方法、分析方法、通信方法の発明がこれに該当します。

分類3「物を生産する発明」

「物を生産する発明」は、「方法の発明」とは異なり、生産物がある発明です。
つまり、特定の方法によって、物を生産する発明です。
たとえば、医薬品の製造方法の発明がこれに該当します。

ソフトウェア製品の事例

2002年の特許法の改正により、プログラムは特許法の保護対象となる「物」となりました。
このプログラムの特許権を争った例として、ジャストシステムのワープロソフトの『一太郎』と『花子』をめぐる2005年の特許権侵害訴訟があります。
松下電器産業は自社が開発したワープロ機器の特許権を侵害されているとして、ジャストシステムと争っていました。一審の東京地裁判決は、ジャストシステムの特許権侵害を認め、ソフトの製造販売中止などを命じました。

しかし、知財高裁(知的財産高等裁判所)では、新たに提出された先行技術の証拠から、松下の特許権自体を無効として、松下側の請求を棄却する判決を下しました。
このとき松下側は、「ソフトウェア製品も特許権を侵害しうる、という当社の主張を認めている部分で評価できるため、判決を受け入れることにした」として控訴せず、ジャストシステムの勝訴が確定しました。

「発明」というと、新規性のある機械やグッズなどを想像しがちですが、このようなソフトウェアや物の生産方法などにも特許権は及ぶのです。

次回は、実用新案などの知的財産について説明します。

解説者プロフィール

平野泰弘(ひらの・やすひろ)さん
日本弁理士会所属:弁理士登録番号12757号
特定侵害訴訟代理業務付記弁理士。ファーイースト国際特許事務所代表。

大手総合メーカーの知的財産部門の社内弁理士を経てファーイースト国際特許事務所を開設。
特許庁の審査・審判、地裁、知財高裁、最高裁等の代理人受任の実績も豊富で、特許庁出願は5年間で連続1000件以上ある。テレビや新聞をはじめとしてメディア出演、掲載実績も多数。
著書に『社長、商標登録はお済みですか?』(ダイヤモンド社)

事務所ホームページ
https://riskzero.fareastpatent.com/

著書

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弁理士 平野 泰弘

 

 

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